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 こちらは、2006年までに発行されたメールマガジンの内容です。


■ 要点をぼかして的を得る

メールマガジンからいらした方、ここが「アタマに残る中小企業」で間違いないです。

 奈良で小学一年生の女の子が殺されるという卑劣な事件が起きた。この裏でとても気になるメディアのPR連携プレーが見えてくる。

■ キーワードはGPS

 今回、事件発生から被害者の女の子が所持していたGPS携帯によるメールの発信位置の探知や、犯人の足取り等、”ハイテク”を利用した捜査が行われていることが関心を呼んでいる。

 ところがこれがとてもおかしい話に聞こえるのは僕だけではないはず。というのは、犯人の後手後手に回ってしまっただけでなく、劇場型犯罪の道具にしかならなかった頼りない”ハイテク”がにわかに必需品として注目されつつあるため。

■ 今回の事件を切っ掛けに向かわせたい方向

 警備業界が今後世間を向かわせたい方向は、当然のごとく自分たちのサービスをエンドユーザーが抵抗なく受け入れる雰囲気作りだ。今まで企業や一部のお金持ちに使われることが多かったサービスを一般家庭にまで広めることができれば、生まれてくる利益は計り知れない。

 業界として心配なのは、少し考えればこの方向は世間にとってあまり好ましくない方向であることにお客さんが気付いてしまう可能性だ。それを情報の物量作戦とメディアによる権威付けで解消しようという作戦になっているように見えてくる。

■ 気付かれたくないこと

 最近の子供を狙った事件は、世間と各家庭のつながりが薄くなってしまったことが原因なのかもしれない。と言うことは、解決をGPS、つまり”個人を守る”方へ求めてしまうことで、子供達を世間から更に隔絶してしまう可能性がある。この流れの向かう先は、海外では既に実用され、批判も出ている各個人の体内へのチップの埋め込みでしかない。そして、それすらも悪意を持った犯人から身を守る決定的な解決法にはならない。

 だから月々の利用料を支払い、見えない敵から身を守るより、

 「点(個人)の守りに注目するのではなく面(地域)の安全対策をしていこう。その方が費用がかからないだけでなく、『確実』だ」

 「面倒だった近所づきあいも、やっぱりやっておいた方がいいんじゃないの?」

という雰囲気になっていくことは、警備会社やそのグッズ販売の企業としては非常にマズイ。

■ 最も気付かれたくないこと

 そして今回1番気付かれたくないことは、GPSが今のところ役に立たない代物であるということを証明してしまった部分のはず。守るべき人が殺され、犯人の足取りを追えるだけの機器では情けない。GPSの弱点は、

 ・ ランドセルに内蔵しても、ランドセルを処分されたら意味がない
 ・ 携帯、発信機等、電源を切られたり、破壊されたら意味がない
 ・ プライバシー侵害への批判が多い

 犯罪を犯す人間は、発覚を遅らせることに頭を使っている。誘拐したらまずGPS携帯等を探し、破壊することくらいすぐに考える。やはりチップの埋め込みをして人間を”徹底管理”する以外に解決策は無さそうだが、先端技術は、開発された時点で既存技術。ということは、ネットや悪名高いラジオ技術専門誌等で、GPS携帯や一見無敵に見えるチップ埋め込みでさえ無力化する方法が一気に広まっても全く不思議はない。そしてその情報に触れる、またはその情報を積極的に求める人の中には加害者候補がいる。

 結局、ハイテク信奉で人間一人を点で守るより、エリアで守る方が理にかなっているという結論に落ち着いてしまう可能性が高いのだ。

■ この方向に行かせないために

 今回の事件報道で企業とのタイアップが既に始まっているかどうかは分からない。でも、GPSグッズ会社への取材依頼をかけたり企業からのプレスリリースを受け、マスメディアが警備会社のパブリシティーに協力する関係が出てくれば、自ずと”宣伝広告”への道は開けていく。

 マスメディアの方にしても、純粋にパブリシティーを手伝っているわけではなく、将来的な広告収入への足がかりの可能性も含めてのパブリシティー協力という一面もある。できれば警備会社に宣伝出稿を願いたいはず。

 そういう具合で世の中へのPRというのは進んでいき、大衆は”それが最良”という考え方に慣らされ、消費が進む。

■ PRは、時には要点から目をそらせる作戦も

 今回、書く視点の都合で若干批判的になってしまったが、これと同様の流れが自分達の業界に起きたら僕も皆さんも悠長に構えていられなくなる。災い転じて福となす方法を考えなければ、今まで積み重ねてきたものが一気に瓦解してしまう。

 今回のこの流れもしっかりと見極めていきたい。

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