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 こちらは、2006年までに発行されたメールマガジンの内容です。


■ あなただけ「特別扱い」

メールマガジンからいらした方、ここが「アタマに残る中小企業」で間違いないです。

 バブル時代に飛ぶように売れ、第二・第三のユーザーに乗り倒され、かなりくたびれた高級車、いわゆるVIPカーが路上にあふれている。今回はここからPRのヒントを考えてみたい。

 かつては会社社長が快適な移動に使ったであろうそれらのセダンは、今は全面スモークが貼られ、シャコタン化され、太いタイヤ、爆音マフラー、いかついエアロパーツが取り付けられている。それがカッコイイか悪いかはあえて言わないが、皆さんもある共通点に気付かれていることと思う。

■ 「爆音組」「豪華絢爛組」「筆記体クラブ名」

 くたびれVIPカー軍団の真っ黒なリアウィンドウには、カッティングシートによるロゴが入っていることが多い。通常リアウィンドウの真ん中に大きな文字で「ナントカ組 since 2003」等とかかれている。インターネットの普及とともに、この手のグループのメンバーは意外に多い。

 休日の早朝、高速道路のパーキングエリアにいると、同車種でありながら一台一台仕様が全く違う車の軍団に出会うことがある。以前、ホンダのワゴン車の軍団に声をかけたところ、あるところで同車種のみがあつまるイベントがあるということだった。僕が見ていただけで5〜60台の大所帯だった。

■ 彼らに対するイメージ

 ある目立つグループを見ると、自然に

 「あの人たちはなんなのだろう?」
 「特別なつながりがある人たちなのか?」
 「どんな世界の人たちなんだろう?」
 「どんな人が仲間になれるんだろう?」
 「どんな切っ掛けで仲間になったんだろう?」

 と色々な疑問が出てくる。
 彼らは別に特別な人たちではなく、普通の会社員や学生だったりすることが多い。見た目のいかつさより穏やかな人たちの集まりであることがほとんどだ。その事実を知っていてもその集団の存在は「モノモノしい」の一言。当事者は、それをあからさまに楽しんでいる。

 実はこの「モノモノしさ」が使いようによっては非常に強く人を惹きつける道具となる。もう一つの例を紹介したい。

■ ユニバーサルスタジオ・ハリウッド

 ユニバーサルスタジオ・ハリウッドから車で10分の所に3年程住んでいたことがある。折角近くに住んでいたので、1年間有効のパスを買った。これがあれば、駐車場代だけで「ユニバーサルスタジオで夕食後の散歩」ということも可能だ。年間何度行ってもオッケーなのだ。

 しかし、お客さんにとって嬉しいのは「何度も行ける」ということだけではない。

■ 誰でも買える、たった7000円の「特別扱い」

 年間パスを持っている客は、バックロットツアーと呼ばれるスタジオ内をバスで巡回する乗り物に待たずに乗れる。

 夏の観光時期になると、多数の日本人を含め、数百人のお客さんの列が出来るのだが、それをよそ目に物々しくトランシーバーで誰かに連絡をとりながら歩くスタジオ従業員に先導され、先頭まで一気に連れていってもらえる。たかだか日本円で7000円程のパス(当日有効券の倍)を持っているだけなのだが、まわりからの視線を感じながら列の最前に行く「特別扱い」を買うことができる。

■ 「あの人たちはなんなのだろう?」という感覚

 VIPカーの例では、お金のかかった改造車で集結することで”目立つ”。まわりの人達は、興味津々で遠巻きに眺める。ここに一種の線が生まれる。注目される側と、そうでない側だ。もちろん「目立っている」からといって、自動的に「憧れの対象」になるわけではない。「バカかあいつら」と逆目立ちをしている可能性もあるのだが、当事者にとっては関係ないことなのだ。

 ユニバーサルスタジオ・ハリウッド、と言えば映画の世界。その中で特別扱いをされている=映画界のVIPと何か関係があるのだろうか?という想像が膨らむ。かく言う自分も年間パスの存在を知る前は「あの人たちは誰なのだろう?プロデューサーの家族か?」などと思っていた。意図的だと思うが、トランシーバーを携え先導する従業員の存在も「特別扱い」を演出している。

■ 優越感と所属感と連帯感がキーワード

 冒頭に出てきた「爆音族」は迷惑極まりないので、奨励するわけではないことをまずお断りしておく。

 しかし、その仲間になりたい人たちの気持ちを考えてみると、優越感・所属感・連帯感を求めていることが分かる。「同じ車に乗っている」という条件さえ満たせば、全員が即友人になってしまえる世界で、お手軽に目立つことで優越感を得ることが出来る。羨望の眼差しを向ける立場でいるより、向けられる(向けられている妄想に浸る)方がワクワクするはずだ。

■ 優越感・所属感・連帯感を提供して”喜ばれる会社”に

 中小企業であっても、「私はあの会社のお得意さんです」とお客さん自身が胸をはって言えるような、わざわざ自分の持ち物にロゴステッカーを貼って歩きたくなってもらえるような、そんなアタマに残る方法を考え、実戦していく必要がある。お客さんに「モノモノしさ」「特別扱い」の輪の中に入ってもらい、いい気分に浸ってもらうことでそれが可能だ。

 この点、皆さん自社に応用出来るかどうか是非考えてみて欲しい。くれぐれも、周囲にいる「お客さん予備軍」をないがしろにすることのないように。

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