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 こちらは、2006年までに発行されたメールマガジンの内容です。


■ トイレの壁

メールマガジンからいらした方、ここが「アタマに残る中小企業」で間違いないです。

 今回のタイトルを聞くと、落書きを連想する方がいるはず。でも、話題は落書きなんかではなく、宣伝する場所と宣伝する方法について、とても参考になる事例についてだ。(今回は少し汚い話が出てきます。もちろん下ネタではなく真面目な話で)

■ 必要な物を必要な所で

 以前お盆休み後の回で、急性腹痛用の薬の話を書いた。その時は、持ってるだけで安心出来て、実際飲まなくても効くと言っていた。

 ところがある日、ついに家族でドライブの最中にあの苦しい腹痛に襲われた。背中に急に冷風が流れ込んだような感覚がおき、体が急激に冷たくなり、その冷えが腹全体の痛みへと変わってゆく例のやつ。

 「きたっ!」

とばかり、水無しで飲めるその薬を口へ放り込み、急いでかみ砕き嚥下する。暫くこらえるが痛みがひく気配はない。もう限界っ!というとき、トイレのあるチェーン店の薬局を見つけ、飛び込んだ。

■ 落ち着いた時

 汚い便座をトイレットペーパーで拭くのももどかしく、大急ぎでズボンを下ろし座る。ようやく落ち着いて顔をあげたその前に、例の薬の宣伝があった。

 残念ながら僕はその十数分前にその薬を飲んでいたので、

 「なんだ、こんなもんっ!」

と怒りの視線で睨みつけることになってしまったが、宣伝方法としては間違っていない。

■ でも、ちょっと遅い

 僕はあの薬がテレビでCMを始めたときからトイレの壁に広告を貼るべしと言っていたのだが、その店ではようやく最近になって貼り始めた。

 トイレという場所、特に個室は手持ちぶさたでやることがない。家では棚の上に本を置き、トイレ文庫を置く人もいるが、出先ではそんなことはできるはずもない。そういった事情から、トイレの中は比較的細かく、長い文章でも読んでもらえる可能性は高い。また、他人の視線を気にしなくてよいことから、普段”宣伝になんか乗せられるもんか!”と思っている人でも、自然な好奇心を発揮しやすい場所だ。

 ただ、残念だったのはCMがオンエアされている期間に出すべきだったのに、このチェーン店では随分時期が外れてからようやく貼りだし始めたこと。やはりタイミングというのは外してしまうと効果も薄い。

■ 腹痛とトイレ

 腹痛の人はトイレに行く。そのトイレに、新製品でも旧製品でも腹痛絡みの宣伝を貼れば、かなりの確率で興味をひくことが出来る。(もちろん腹痛絡みでなくても効果は高いのだが、この場合場所と内容のマッチングを主旨にしている)

 ところが同じトイレでも例えば、頻尿・残尿の問題をかかえ、前立腺肥大等を心配する男性が立った目の前にその効能を謳った宣伝が貼ってあったとしてもあまり読まれない。それは、人の行動をよく観察していると分かるのだが、真っ最中の男は何かに集中することや、2つの行動を同時にすることはなかなか出来ないからだ。

 その目の前に宣伝広告をベタベタはり付けたら、最悪の場合、店の印象が悪くなる。

■ 時と場所と、人の行動をよく見る

 今回は「腹痛とトイレ」という関係から宣伝広告を見てみたが、これは色んな方面に応用できる。ただし、気をつける必要があるのは、

・ その場所でいいのか?
・ その状況で宣伝広告が好意的に見られるのか?
・ その状況で宣伝広告は関心を惹けるのか?

といったこと。特に2番は大切。

 例えば、自分の部屋のようにくつろいでもらうべきホテルの部屋のトイレに宣伝広告を貼るのは感心しない。お客さんがプライバシーを侵害されているような気分になる広告や、自然な行動を阻害するような宣伝広告はいくら注目されそうでも避けたほうが良い。

 常日ごろから、自分や他人がどんな法則で周囲のものを見ているのか、特にどんな基準で無数にある物の中から見るべきものを決めているのか?人間の体の構造上、視線を向ける方角にどんな法則があるのか、等に関心を持つことで、意外な方法を見つけることが出来るかもしれない。

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