■ 人が喜ぶ宣伝文句
メールマガジンからいらした方、ここが「アタマに残る中小企業」で間違いないです。
思わずヒザを打ちたくなるような宣伝文句がある。でも、そんな文句にはなかなかお目にかかるれるものではない。「こんなもん全然要らん!」と思う宣伝文句は腐るほどあるが、一例をある日のチラシに掲載された掃除機の説明から抜粋してみる。
・ ステッキグリップ
・ ガイド付き伸縮パイプ
・ モーター空清フィルター
・ 手元パワーコントロール
何が言いたいのか分かるだろうか?仮に分かったとして、欲しくなるだろうか? 少なくとも僕には分からないし、欲しくならない。
■ 企業がお客さんに知ってほしいこと
前出の4項目。これらの言葉は「企業が僕らに知ってほしい」言葉だ。問題点はここだ。
まず「ステッキグリップ」って何だろう? 全くイメージ出来ない。ステッキのグリップみたいに曲がってるのだろうか? それとも、ステッキみたいにもたれかかって掃除が出来るのだろうか?? 全く分からない。
次に「ガイド付き伸縮パイプ???」。パイプに目盛りでも付いていて、何センチ伸びたか分かるのだろうか? または、まっすぐちゃんと伸びるように、鋼鉄製のガイドレールか何かが付いているのだろうか? そんなはずないのは承知の上だが、全く伝わってこない。
「モーター空清フィルター」ってのは? 掃除機が吐き出す空気が汚いから、清浄して吐き出させるためのフィルター付きって事か? でも、吹き出した空気で舞い上がるホコリの方が問題なのでは?
「手元パワーコントロール」で、何となく自分のイメージと相手の言いたいことが合う。4項目中唯一これだけ。
■ 僕らが知りたい事
この掃除機で言えばお客さんは「ステッキグリップが付いていること」を知りたいわけではない。そんなことより、ステッキグリップがあると今まで問題だった何を解決してくれるのかが知りたい。現行のものとどう違って、それがどう有益なのかが知りたい。
■ お客さんは知らないことだらけ
新しい製品を見て、今までと違うデザインだったりすると「これって、なんでこんな変なカッコしてるんだ?」と思う。説明されてもあまりピンとこない。でも、家に帰り、いつもの古いタイプの製品を使ってみて初めて「おお!あの形だとこんなときに役立つのか!」と分かることがある。お客さんは、潜在的に不便に感じていることがあっても、その不便さに気づいていない。適切な説明をされて初めて自分が困っていたことに気づく事も多い。
つまり、商品説明を聞いて、特徴を聞いて、利点を聞いても商品の特性なんてその場では理解出来ないのが大部分のお客さんなのだ。そういう方々に「そっか、そういう問題があるね!」と思わせる文句を考えてもらいたい。
■ この言葉で「おお!」と思った
先程紹介した掃除機と同じチラシのなかに、おもわずヒザを打ちたくなるような一言があった。商品はそれ程大袈裟なものではない。「座いす」の紹介だ。それは丁度、義父の誕生日が近づき、プレゼントを何にしようか迷っていた時目に止まったチラシの中の小さな文句だった。
「座面が高いから立ち上がりが楽です」
僕の義父は病気で一度倒れて以来体力が落ちた。とはいえ、まだ休日にゴルフに行けるほどだから心配することはないんだが、日常の立ち座りが非常に辛そうなのは見ていて分かった。座布団に座ったまま体重9キロほどの孫をだっこするだけで、バランスを崩しそうになることもある。それを見ていて、いつも心配していた。だから、僕ら夫婦はそのチラシを見て「これこれ!これはいいプレゼントになる!」と喜んだ。
■ よく言われることだが、再確認
「お客様の立場に立って」ものを考えるのは基本。しかし、それが実践出来ているようで出来ていない事例は多い。例えば、担当者が若者だったとしたら、体力もあり足腰もしっかりしているだろう。すると、”お客さんの立場”に立った若者の頭に浮かんでくる言葉は、
・ レザー風で高級感がある
・ ブラックなので、インテリアに馴染む
・ ひじ掛け付きでリラックス出来る
・ 背もたれが高くて座り心地がよい
・ 3段階リクライニングで昼寝も出来る
・ 回転板付きで方向がかえやすい
どれも正しく商品を表してはいるが、所詮「豪華な座いす」でしかなく、買いたい理由になりにくい。
■ 使う人の立場にたつということ
確かにこの座いすを買う人は、老人だけではないかもしれない。一人暮らしの若者でも、ソファーの代わりに買うかもしれないし、子供でもテレビゲームがやりやすいし、偉くなった気分に浸れるから欲しがるかもしれない。(実際僕が子供の頃、”社長”みたいにひじ掛けがついたイスが欲しかった)
しかしながらこの座いす。メインの購買者層はやはりある程度年齢が高いと考えられる。それなら、若い担当者は自分の両親や祖父母とお客さんを思い重ねてみるとか、近所の老人を思い浮かべてみるなど「自分が相手の立場に立つ」だけでなく、「モデルを想定」して考えてみてはどうだろう?よりお客さんに近い言葉が生まれるのではないだろうか。
「座面が高いから立ち上がりが楽です」この言葉から感じたものは、”思いやり”だったというのも大切な事実。