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 こちらは、2006年までに発行されたメールマガジンの内容です。


■ 時間差不意打ち?!

メールマガジンからいらした方、ここが「アタマに残る中小企業」で間違いないです。

 突然ですが問題です。

 「あなたのターゲットは50代の夫婦です。新型の4ドアセダンを売ってください」

 と言われたら、まず皆さんは何から考えるだろうか?

■ 50代の人たちは?

 おそらく、50代の皆さんの人生における「今」にかけているものを探そうとするのではないだろうか?

 たとえば、『一生懸命働いてきたから、そろそろイイ車』とか、『子供が独立したから、ちょっと贅沢してみませんか?』とか、『自分にご褒美』とか、出てくるのはそんなところかもしれない。

 しかし、この3例。少し後ろ向きすぎると思わないだろうか?

■ 月並みないい方=「夢」を売る

 人が物を買うとき、特に車にはその傾向が顕著に現れるが、「夢」を一緒に買っていることは言うまでもない。とはいえ、その夢の表現があまりに現実的になっていたり、”贅沢する罪悪感を払拭させる”ためのコピーになってしまっては買い物が楽しくない。

 最近、面白い例に気付いたので、これは是非紹介したい。

■ 30代夫婦に売るかに見えた車が、50代に売れている

 最近街を走っていると、新車の4ドアのセダンに50代の夫婦が乗っている所を多く見かける。今までは、ワンボックスやワゴン等の”人とモノが沢山乗る車”だったのに、近ごろセダンが増えてきた。

 具体的には「トヨタ プレミオ」が面白い。テレビ宣伝では、40前の夫婦が日本の名所を旅するうち、外国人観光客にシャッターを押してくれと頼まれる。夫の方は快く承知するのだが、カメラを向けた先には自分の妻と仲良く並んで笑顔で収まっている外国人がいる。夫は少し情けない顔をする。

 そして車は走り出し、妻が「あれ?妬いてるの?」というあのコマーシャル。

■ ターゲットは誰?

 普通に見てしまうとこのCMのターゲットは「30代夫婦」になる。しかし、実際30代夫婦が日本国内をあんな具合に旅行することを想定しているのだろうか?

 あのくらいの歳であれば、まだまだ子供を置いて優雅に旅行なんて出来ない。すると、妙な違和感を感じてしまう。しかし、このキャストは若さを残した夫婦でなければ絶対に成立しない。そうすることで、初めてこの夫婦に共感できる年齢層がいるのだ。

 それが50代〜60代の人たちだ。

■ 欠けているものはなに?

 誰でも『自分が老いたこと』を素直に認めることは難しい。そんなことを素直に認めるよりむしろ、

 「オレだって(私だって)まだまだ!」

 と胸を張れる人の方が生き生きしていて楽しい。僕の予想では、ユーザーはあのCMに自分をダブらせ、少し甘酸っぱい「恋」のようなものを買っているような気がしている。

 つまり”欠けているもの”は「周囲が勝手に自分を年寄り扱いする」ことであり、”満たしたいもの”は「まだまだ人生楽しめる!」という自信なのではないだろうか?

■ とはいえ、買った人の理由はそれだけではない

 もちろんこの車がCMだけでなく、

 「もういまさらワンボックスでもないでしょ」
 「かといって、2ドアもないだろう」
 「セルシオ?クラウン?いえいえ、とんでもない」
 「お、扱いやすいサイズで品の良いセダンがあるぞ」
 「しかも価格も手ごろだし、5ナンバーだから維持費も安いわね」

 という選択肢にバッチリきているから、という理由もあるだろう。とはいえ、この車を買った後でこのCMを見た人でも悪い気はしないはず。

■ ターゲットにぶつけるだけではダメ

 「客層を絞って、ターゲットを知ること」

 これはよく言われる鉄則。しかし、絞りきって小さくなったターゲットにタマを当てようとする行為は外れやすい。この例のように、少し時間差、うっちゃりでターゲットの心に響くPRが出来れば、かなり的は大きくなってくる。

 勝手にお客さんの「ライフスタイル」をプロファイリングしていい気になってしまっては、こういう案は出てこない。お客さんは実は1世代か2世代前と共感したい願望を持っているかもしれないのだ!

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