■ 「白い」ことは良いことか?
メールマガジンからいらした方、ここが「アタマに残る中小企業」で間違いないです。
ある家電屋のチラシを見ていて、目を引いた写真と文句があった。写真には、10人程の従業員が白い手袋をはめ、配達用のトラックの前に集結している。その上にコピーがある。
「私たちは白い手袋で配達します!」
だからどうなんだ?という言葉だが、アタマの中にイメージが膨らんでくるのを止めることが出来ない。
■ 「白い手袋」
黒いタキシードを着た男が白い手袋をはめ、背景が真っ黒の箱の中に手を突っ込み、手だけを使ってまるで手袋が生きているようなダンスをする、そんな指芸を見たことがあると思う。
僕の頭の中に浮かんできたのは、暗やみの中を何組もの白い手袋だけが忙しく家電を運ぶ風景だ。白と黒の最強のコントラストは、白を際立たせる。
■ 言葉ではなぜいけない?
この白い手袋の持つイメージは、「清潔」さであり「誠実」さだ。女性的な「きめのこまかさ」も感じさせる。家電屋としては、
「誠心誠意のサービスで、値段が安いだけでなく、配達まで心を込めて行います」
というイメージは是非欲しい所だろう。ただでさえ同じような家電店が乱立し、タレントをイメージキャラクターとして使い、スパイ合戦で同じような価格帯を保っている飽和状態の業界。何かで抜きんでたいという意思を感じる。しかし、言葉それをでいくら表現しても、お客さんのアタマには、
「どこの家電屋も同じことばっかり言ってるなぁ」
と、結局どうでも良いことになってしまう。実際、お店に対する特別な感情があるわけでもなく、ロイヤルになる理由もないのだから当たり前の話なのだ。
■ イメージ補強
言葉にイメージを添えて補強してやることで、記憶は格段に促される。ちょうど、英単語を勉強するとき、ABCだけを眺めていても全く記憶出来ないが、写真やイラストと共に単語が出てくると覚えやすいのに似ている。
テレビ等で紹介される有名な「記憶術」でも、複数の物の順序を覚えさせるのに、同様の方法を使っている。自分の家を想像させ、
「玄関にはカギがおいてあり、リビングに入るとイスに座ったネコのアタマの上にリンゴが載っている。奥の流し台の中にはノートが十冊入っている」
等と、イメージと関連づけることで記憶が簡単になる。これはPRでも同じだ。
■ 映画の中でも
スピルバーグ監督の「シンドラーズ・リスト」を思い出してほしい。全編白黒の映画なのだが、1ヶ所だけ色が使われているのはよく知られている。ユダヤ人が連行される中を、憲兵にとがめられず器用に歩いていく少女の服だけが赤く染められている。
スピルバーグ監督の映画は映像・色・音・音楽全てを巧みに融合させ作られていくのだが、この白黒とカラーの組み合わせは特に印象的で、どうしても記憶に残る。この手法は「白い手袋」の色効果も同じだ。
■ カラーマーケティングも一時期流行ったが
中には、
「そういうことなら大丈夫。ウチの会社のロゴは、カラーコーディネーターの先生に頼んで、信頼と安心をイメージする色を使ってもらっている」
と言う方もいると思う。それはそれで非常に大切な事なのだが、もはやそれだけでは記憶してもらうには弱すぎる。なぜなら、ロゴというのはじっくり見られることは少なく、印象はあるが残念ながらメッセージとしてストレートに伝わってきにくい。
■ ロゴだけでもダメ、多すぎないメッセージは良
この家電屋の場合、ロゴは「安さ・元気の良さ」を感じさせる色使いで作られ、チラシの全体のイメージもそれに準じている。その上で、「サービスのきめ細やかさ」という無形のメッセージを具現化する表現として、白い手袋を使っている。2重にメッセージを発することで、視認性を高める役割を果たしている。
とはいえ、イメージ補強されたメッセージを過剰に連発すれば好感度は下がる。くどくどと「聞こえの良い言葉」を並べ立てたりするのと同程度の悪印象だ。しかし、バランスよくツボを押さえればかなり「使える」手法だといえる。伝えたいメッセージを、どんなイメージに置き換えることが出来るか?考えるのも無駄にはならない!