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 こちらは、2006年までに発行されたメールマガジンの内容です。


■ ミステリアスな存在

メールマガジンからいらした方、ここが「アタマに残る中小企業」で間違いないです。

 いまどきテレビを見ていれば、芸能人達がたいした驚きもない庶民生活をさらけ出し笑いを得ようとしたり、かつて”スター”と呼ばれた老齢の芸能人達が、若者の人気を獲得すべく、バラエティー番組で私生活でのくだらないエピソードを披露している。とっても恥ずかしい。

 これら行為が「ミステリアスさ」を無くして、どんどん”お隣のおにいさん・おねえさん、おじさん・おばさん価値”へと自分たちを落としていることに気付いていない。

■ 価値ある「知らないことが多い」こと

 海外ではロバート・デ・ニーロ、日本では高倉健。どちらもスクリーン以外での姿がなかなか見れない”本当の映画俳優”だ。人気や知名度は横に置くとして、カッコ良さではどちらも甲乙つけがたい。

 この二人に共通しているのは、この二人の私生活等の情報がほとんど知られていないこと。ともすれば、スクリーンに写っている時だけ存在して実像は存在しないのだろうか?と思ってしまうほど実体がなくミステリアスだ。

 特に高倉健にいたっては、”朝起きる”という当たり前の行動すら想像も出来ない!ましてやテレビで自宅を見せている芸能人と違い”住んでいる環境”さえ想像出来ない。

 この「知られていないこと」が素晴らしい価値を生んでいる。

■ 秘伝のタレ

 僕がよく行く「豚カツ屋」では、秘伝のタレを使っている。とはいえ、

「ウチはこれこれこうのタレを使ってます!」

と製法まで公表している店はないわけだから、どこの店もそれぞれ”秘伝のタレ”と言って間違いない。なのに何故、このオヤジのタレに関しては人に紹介するとき、

「あそこは秘伝のタレを使っているんだよ」

と自慢したくなるのか?

■ 語らないこと

 実はこのオヤジ、市販のタレを使っているのかもしれない!でも、店に立つオヤジの姿が、

「何か凄いことをしているに違いない。絶対そうだ!」

と想像をかき立てる。

 このオヤジさん、店で全く話さない。かれこれ20年近く行っているが、オヤジの声を聞いたことがない。「じゃあ、なんで”秘伝のタレ”って知ってるんだ?」と言われそうだが、もちろんオヤジが言ったわけではない。看板に「こだわり!秘伝のタレ」とくだらない文句が書かれているわけでもない。

■ 情報提供のバランス

 僕が初めてその店に連れていってもらった時から、それは「秘伝のタレ」と呼ばれていた。じゃあ、どこから始まったのか?

 それは、一緒に店に立つ「おふくろさん」からだったのではないかと予想される。おふくろさんはオヤジと相反して超オシャベリなのだが、あるとき、

「おばさん所のタレ、どうやって作っとるの?」

と聞いたところ、あのオシャベリおばさんが、はにかみながら

「知らんがね。あの人が勝手にやっとることやで」

と言った。世界で唯一、オヤジの声を聞いたことがあるだろうおふくろさんすらも知らないタレの製法。これはただ事じゃない。なにしろ世界でオヤジしか知らないことなのだから!
そんな話が広がって”秘伝のタレ”伝説が出来、その店は繁盛している。

■ 情報の流出量を制御

 この秘伝の夫婦の場合、2人の相反する性格がキャラクターに陰影を作り、自然に情報の流出量を制御し、店の魅力になっている。そして知らないうちにクチコミで”秘伝”の称号を与えられ、それをことも無げに維持し続けている。

 以前から僕は「こだわりの○○」という言葉の安っぽさを批判しているが、それはこの”秘伝のタレ伝説”を自然発生させるだけのミステリー(陰影)がない企業が、必死になって言葉づらだけで”差別化”を謀ろうとしている行為に見える。

 その姿は、芸能人が「私だってホントは凄いのよ」とばかり、”芸能人らしい生活”をひけらかすことで、逆に庶民的で魅力の無い存在になっているのに似ている。

 高倉健に憧れても「男は黙って・・・」は難しい。だから価値がある。

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