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 こちらは、2006年までに発行されたメールマガジンの内容です。


■ 致命的!メッセージ同期ずれ 下

メールマガジンからいらした方、ここが「アタマに残る中小企業」で間違いないです。

 前回行動とメッセージの同期していない例を紹介した。メッセージとは、店舗・会社・HPのあり方や、チラシのみならず、従業員全員に会社の方針が理解されているかにかかわってくる。

■ ストレートなメッセージ

 ここに、ある時たまたま寄ったレストランの壁に貼られていたメッセージがある。(僕は食べるのが趣味なので、外食系の話が多いです。実際、サービスを考える時、一番説明しやすいという理由も)

「お子様連れのお母さま方へ
お子さんは散らかすことの名人です
私たちも幼い頃はそうでした。
テーブルの上やお席の周りの汚れ等を一切
お気になさらないで下さい
私共店の者がかたづけます。
私共の店にいらした時ぐらいゆっくり召し上がってください」

 これほどストレートなメッセージは、時に拒否反応を呼ぶ危険性がある。僕が最近の傾向で1番怖れているのが「お客さんの猜疑心」。メッセージがストレートな程、ここを怖れる。

■ このメッセージを見た”お客さん=自分”の反応

 最初にこのメッセージが目に留ったとき、僕は最初から最後まで読んだ。それには後述するような理由がある。普通であれば途中まで読んで、

「なんかまた良いこと書いて、目立とうとしとるな」
「実行する気がないなら、書かないほうがマシ」

 僕自身かなりひねくれたお客さんになっているのを実感してしまった。しかし、これがお客さんの姿だと思って間違いない。それだけウソのメッセージにさらされ続けたからだろう。

■ それでこの店は?

 結論からいうと、このレストランの従業員、この猜疑心をしっかり打ち消してくれた。店の入り口で既に「あれ?」と感じるものがあった。

 僕が子供連れであるのを見て、とても愛想の良い女性が子供に声をかけ、妻に「イスか座敷、どちらがお母様にとって楽ですか?」という意味の質問をした。彼女は30代半ば、後で分かったことだが、9歳になる息子がいるということだった。

 この質問の意味は大きい。例えば、あまり気の利かない50代くらいの「子育て大先輩」ともなると、

「座敷の方が楽だわね? 子供を寝かしておけるで」

と、自分の価値観で”気を使う”ことが多い。しかし、その場によって座敷、テーブルどちらが良いかは変化するし、心理状態でも変わる。例えば個室風に囲われた座敷なら座敷を選ぶ人でも、囲われてなければ背後のお客さんに気を使ってしまうから、背もたれのあるテーブルがいいという具合だ。

■ 「どちらがお母さんにとって楽ですか?」という質問

 子育ての主役は母親だ。家族連れのお客さんであれば、1番優先してあげて欲しいのは母親。この母親に対し、自然に「1番楽な状態」を選択させる質問の仕方は好感をよぶ。この日は妻が選んだ個室風になっている座敷に通してもらった。ここからも徹底していた。

■ 言葉+行動+自然さ

 個室に通され「赤ちゃんを寝かせたいか、座らせたいか」さらっと聞かれた。寝せたいなら奇麗な毛布が用意され、座らせたいなら、子供用座イスを持ってきてくれる。そうして、いい気分で座敷に座った目の先に、冒頭の小さなメッセージカードが目に留るのだ。自然、好意的に読んでしまうことになる。

 僕は小道具が徹底して用意されているこの姿勢に、本物を感じた。言葉だけなら簡単だ。徹底的に気を使って話しかけ、要求に応えられないのであれば「すいません」で何でも対応出来る。しかし、この店のように今までの経験から「毛布があったほうがいい」「イスには股の部分にベルトがついたものがいい」と、要求に応える行動をすれば、それはお客さんに伝わる。

■ 誰もが持つ”見抜く力”を侮るな

 会社によっては、経費削減をとなえるあまり、最初にお客さんへのサービスの手を抜くことを考えるところまである。実際に手を抜いてしまう所もあるし、質を下げる所もある。

 人間の感覚と目の力は想像を絶するものがあり、「嘘」や「まやかし」は即見抜くだけの計算力を備えている。良い演技をする役者が人の心を打ち、セリフを覚えただけの訓練の足りない役者が「くっさい演技!」と舞台に立った途端に揶揄されるのは、人の”見抜く力”の一番簡単な例だろう。

■ 口先と付け焼刃ならやらないほうがまし!

 最近の雪印等の例が記憶に新しいところだが、お客さんに自社のサービスが「演技」や「付け焼刃」とさとられたとき、その会社は回復不能のネガティブイメージを植え付ける。付け焼刃の「顧客サービス充実」ならやらないほうがマシ!社員、パート、アルバイト、派遣社員、外注業者まで、ある会社に関わる人々全てが「会社の代弁者」になる。全ての人が、自然に行動出来る会社になる方法が、「行動とメッセージ」ががっちり同期した、アタマに残る企業になる近道なのだろう。

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