■ 致命的!メッセージ同期ずれ 上
メールマガジンからいらした方、ここが「アタマに残る中小企業」で間違いないです。
メッセージ同期の良い例を御紹介するまえに、今回は悪い実体験から。
■ 動かない店員
先日友人と、あるタイヤ屋へホイール修理に行った。昼12時10分。店には他のお客さんはおらず、僕らの車が広い駐車場に1台だけ。工場に店員の姿は見えない。「昼休みかな?」と思い、車から降り事務所を覗くと、店員が3人こちらを見ている。しかし、誰も立ち上がろうとしない。
事務所のガラス越しに睨み合うこと5秒ほど。彼らの顔には「何しに来たんだろう?」という表情。友人は我慢ならず「帰ろっ!」と言って車に向かった。その時、ようやく一人がゆっくり立ち上がった。
■ 終始不機嫌な店員
その店員は、年齢40代後半か。こちらの話を聞くあいだ、終始不機嫌そうな眉間のシワは消えなかった。別にコワモテのオヤジさんでもない。細身で、どこにでも居そうな人。何か嫌な雰囲気での立ち話だった。ホイールは直った。だが、この店にはもう2度と行かない。
■ 問題はこの店員の顔だけじゃない!
眉間にシワを寄せて話をする人が他に居ないわけではない。普通の話し方が「なにかイヤそう」な人は沢山いる。一般的に気が弱く、否定・拒絶を怖れるタイプの人にこの傾向が強い。つまり、これは「防衛の表情」であり、彼にとって人と接する時1番落ち着く表情なのだ。
■ では、なにが問題なのか?
その店の店頭は、賑やかにポスターが貼られ、沢山のノボリが立ち、いかにも「いらっしゃいませ!」ムード。ところが、その店と店員の態度とのギャップが激しい。つまり、店舗の持つメッセージと、そこで働く人の発するメッセージが同期していないことが問題だ。
■ 悪印象増幅回路
メッセージの同期が取れていない場合、お客さんに与える悪印象は増幅される。その簡単な構造はこうだ。
- 会社側が発する情報に目が触れる
「最高のサービスと、100%の満足をお約束」
といった”良い言葉”や、”フレンドリーな雰囲気”
↓
- 記憶「良さそうな会社だ」しかし、今は必要ない
↓
- ある日、その会社の提供するサービスに必要が生じる
↓
- 再度会社の情報を見直し、数社の選択肢から決定
↓
- 期待「ここなら間違いなさそうだ」
↓
- 行動 (来社・来店・通販購入等)
↓
- メッセージとの同期ずれ・期待を裏切られる
↓
- 怒り (+周辺の人々へ伝達・クチコミ)
■ なぜ悪印象が増幅されるのか
それは、その会社が「お客さんにウソをついた」からにほかならない。
印象の悪い会社は「とにかくお客が店に来ればなんとかなる」との考えから、ワナを仕掛けて待っている。お客さんが怒るのは、「自分が純粋に期待を抱き、そのワナにまんまとはまってしまった」ような屈辱感を持つためだ。
誰にでも「賢く生きたい」という心がある。それが自尊心になり、自信につながる。会社側の「ワナを仕掛ける」行為は、お客さんの自尊心を傷つける。結果、怒りも悪印象も増幅される。目先の「とにかくお客が来ば・・」という考え方が、行動とメッセージの同期ずれを生む。
■ チェックポイント
一度この「悪印象増幅回路」に収まってしまったお客さんは、二度と戻ってこない。それどころか、クチコミで悪いうわさはどんどん広まる。そうならないための簡単なチェックポイントは、
□ 社員(店員)は会社の方針を理解しているか
□ 宣伝広告(PR)は会社の方針を反映しているか
□ PRが”奇麗なだけ”の自己満足になっていないか
□ PRと会社の「見た目」の統一感があるか
□ 「とにかく来店させれば」とPRを”ワナ”だと思っていないか
□ キャッチフレーズ・コピーを広告代理店に丸投げしていないか
□ 見られたい姿と本当の姿が同じか
□ 売ったら売りっぱなしにしていないか
□ お客さんの視点(客観的な視点)で自社を見るゆとりがあるか
当てはまる項目が多かったら注意が必要だ。
■ 次回は「行動とメッセージの同期」が好印象を呼んでいる会社を紹介
現在の僕自身、あまりにメッセージの同期ずれを起こしているPRとの接触が多いためか、”良い言葉”に対して非常に懐疑的になっている。しかしその中でも「へぇ〜!ここまで出来るんだなぁ」と感心させられた事例がある。社員・パート・アルバイト、立場に関係なく自然に行動とメッセージ同期を行い好印象を得られる会社は、これからも生き残っていくことは間違いない。