■ 巧妙にイメージチェンジ
メールマガジンからいらした方、ここが「アタマに残る中小企業」で間違いないです。
テレビを見ていて、道を走っていて、新聞を読んでいて気づくことがある。あまりに当たり前のことを、さもありなんとばかりにいうのも気恥ずかしいが、定期的に一貫した宣伝広告を行っている会社は”見慣れた会社になる”ということ。しかし、実はここが全然見えていないケースが意外に多いのだ。一貫性がないため、何度広告しても見慣れない会社のまま居続けてしまう。
■ 「人間は変化を嫌う」のではないか?
日々新しいことに挑戦し、情報を仕入れ、環境の変化に対応している方々からは「そんなはずはない!」という声が聞こえてきそうだ。しかし、これには二通りの視点を分けて考える必要がある。
・ 自分への視点
・ 他人への視点
この2点だ。自分が自分を見る視点と、自分が他人を見る視点。この視点によって「変化」への反応が違う。
■ 自分への視点
常に新しい事に挑戦する(仕事、趣味等)、新しいファッションを取り入れる、新しい機械を導入する(携帯電話、ネット等)、こういった行動を通して人は常に進化している。向上心のある方であれば「自分」は常に変わるべきものであり、変身を遂げた時の満足感はたまらないと考えている。
では、他人に対してはどうだろうか?
■ 他人への視点
極端な例だが、いつも大人しい身なりをしていたタレントが、ある日突然ヘビメタ衣装に身を包んでテレビに現れたらどう思うだろう? アイドル歌手が突然演歌歌手になったら?
「なんや、こいつ?」
と思い、今まで自分がその人に抱いていたイメージがなんだったのか?そのギャップに強い不快感を感じることだろう。逆に、徐々に変わっていった人に対して「そういえばあの人ずいぶん変わったね!」という好意的な視点もあることも後で重要になるので、付け加えておく。
■ 安心感を得るための本能
不快感の根拠は、人が常に自分のなかで他人の性質を単純化して固定し、記憶の整理を行っているからではないかと考えている。それが崩れたときの反応が違和感として現れる。これは少しでも安定し、納得しやすい環境で生きていたいという本能的な心の働きなのかもしれない。だから、人は自分自身が「突然変わる」ことを”冒険”というし、「突然変わった人」に冷たい。
「突然変わった人」への違和感は、時とともに「見慣れる」ことで、新しい性質を再度単純化し再固定する。前述の演歌歌手はその好例だ。
■ 大企業のイメージチェンジ作戦
この性質を理解した上で、企業が行う「イメージチェンジ」宣伝を考えてみる。大企業はイメージチェンジをするときも、実は前のイメージをある程度保持しつつ行っている。たとえば、さまざまな要素(信頼・品質・革新性等)でイメージが育ってきた会社なら、今後はそのうちの「革新性」を柱にして重点的に打ち出そう!と決めることで、チェンジというより、今ある柱を絞り込む方向で変化していく。だから、一見「ガラリ」と変わっても、違和感を与えない絶妙さで変化する。
■ 小さな変化を経て、理想の形へ
世間の多くはソニーのロゴマークは不変のように感じがちだが、実は年月とともに徐々に文字の太さが変わったり、形が変化している。ソニーが企業イメージを大切にし、理想の形を求めつつ、お客さんの持つ「突然の変化への違和感」を最小限にしている努力が伺える。「そういえば変わったね」という好意的な反応もあるだろう。
■ 中小企業のイメージチェンジ
まず考えたいのは「自社が何かを変えることで、どのくらいの人が変化に気づくか?」「誰に対してのイメージチェンジなのか?」ということ。
言いにくい話だが、もしかしたら「自社は誰にも知られていない会社」かもしれないし「認知度、共感度が低い会社かもしれない」。つまりこの場合、イメージチェンジと思っているのは社内だけで、世間からすれば「新規性」しかないのかもしれない。
■ 新規性があるなら、まだ強い!
とはいえ、悲観的に考えないほうがいい。新規性があるのであれば、お客さんの頭に白紙状態からイメージをつくることができる。可能なかぎりトライアル&エラーを避け、「これだ!」という一貫したイメージを定期的に露出していく。これを続けることで、お客さんは視覚的にあなたの会社を認知し、記憶していく。企業のイメージと業務内容が記憶されれば、あとはお客さんに必要が生じたとき選択肢に上り、他社との比較の末、見事選択されることになる。(他社に負けてしまってはもともこもないが)
■ キーワードは「定期的」と「一貫性」と「見慣れ」
先程「トライアル&エラーを避ける」といった。それには理由がある。前述の通り、人は「見慣れ」た後にしか「認知」をしてくれない。
「よし、ウチのイメージは赤で行こう!」
と一度宣伝してみたが、反響が無い。これは困ったといって次回、
「う〜ん、じゃ青ならどうだ?」
と”反響の度合い”を「認知度・好感度」と勘違いして、下手な将棋のように行き当たりばったりの方針を作る会社が意外に多いのだ。一度、見る側(お客さん)の視点で考えてみれば「この会社ってコロコロ変わるなぁ」と思うはず。これを避けるため、事前の意思決定をはっきりさせ、ある程度の期間「見慣れ」の時期として腰を据える度胸が欲しいところ。