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 こちらは、2006年までに発行されたメールマガジンの内容です。


■ 視覚聴覚の二人三脚

メールマガジンからいらした方、ここが「アタマに残る中小企業」で間違いないです。

 何かをアタマに残す方法は、なにも印刷やキャッチコピー、映像だけではない。もう一つ絶対忘れてはならないことがある。記憶を促す、記憶を立体的にするために「音」を使うことだ。

■ 「音」はどう使われているか?

 1番有名な「音」の効果に、スティーブン・スピルバーグ監督の「ジョーズ」がある。映画の最初から裸で水泳を楽しむ女性を、暗い海底から狙うサメの視点で撮られたシーン。ここから「ジョーズが出てくるぞ」という効果音が使われる。以後、ジョーズが出てくる前にこの効果音が多用される。

 これは、「なにか悪いことが起きる予兆」として観客に記憶され、その音を聞くと毎回不安になる。その不安な心理状態を作ったあとで、サッと別のシーンに移ったり、ショッキングなシーンになったりする。映画の中ではよく使われる手法になった。

■ テレビコマーシャルの中で

 最近この「音」について、ストレートな表現を使ったCMがある。居酒屋の「白木屋」だ。「いらっしゃいませ」という音は良い振動だという宣伝。もちろん、振動とは音の波長のことだろう。それを学者にユーモラスに言わせることで、信憑性と親近感を演出している(個人的にはあまり好きじゃない)。

 その他テレビに限らず、色々な例がある。1つずつ説明せず列記してみる。

・ アサヒビールの缶を開ける音と、注がれたビールの「しゅわ〜〜〜」
・ インテルのロゴと必ず一緒に出てくる短いメロディー
・ パソコンの起動音(マック・ウィンドウズ共に)
・ スバルの車の排気音(ボクサーサウンド) 
・ アメリカンホームダイレクトの電話っぽい音

■ 音によって、「ID(アイデンティファイ・識別)」する

 これらの音は「サウンドID(サウンドロゴ)」と呼ばれ、音による識別を促すために使われている。テレビコマーシャルやラジオで、これらの音が流れたり、街で耳にすることで、無意識に

 「(インテルはいってる)」
 「(お、スバルの音)」
 「(アメリカンホームダイレクト)」

 とアタマの中でつぶやかされている。目と耳から同時に伝わってくる情報は、リンクされ1つの記憶になってアタマに残る。会社のロゴは、サウンドIDと組み合わせることで、より立体的で印象的になる。もちろん快感を伴う音でなければならないため、開発するときも何種類もの試作を繰り返したことだろう。または、意味もなく使っていた音を再発見し、「あ、この音いいじゃん!」と即決したかもしれない。

■ テレビコマーシャルなんて打てるわけないじゃん!

 と言われることは予想の上。テレビCMを打たない会社にも、そのサウンドIDを上手く使っている会社がある。最後は、考えることと工夫する努力なのだ。

 例えば店舗販売がメインの企業であれば、店員の声の出し方に特徴を持たせている。これがサウンドIDとして考えられたのかどうかは不明だが、100円ショップ「ダイソー」では、単純に「いらっしゃいませ」と言わせていない。なぜか、僕の行く岐阜県内のダイソーではどこへ行っても、

 「いらっしゃいぃ〜〜〜〜まっせ〜〜」

 と普通の会話で絶対ありえない発音をする。妙にアタマに残る言い方だ。スーパー等の場内アナウンスの独特の発声も同じような印象だが、ダイソーは「ちょっと異様」なところが他より記憶しやすい。それで企業イメージが上がったり下がったりするか?というより、がっちり記憶させてしまうことに意味がある。

■ 実は、昔からこんなことはやっている

 日本の伝統的な商売でも、このサウンドIDは使われている。

 例えば寿司屋。今の回転寿司は知らないが、カウンターの寿司屋に行くと、ねじり鉢巻きの職人が「へい、らっしゃいぃゃ!!!」と短く大声で挨拶する。この威勢の良さが、店のサウンドIDになっているのだ。多種多様の飲食店の中でも寿司屋だけにこの威勢の良い「音」が似合う。

 この声と雰囲気に浸りたくなって、寿司屋に足を運ぶお客さんも多いのではないだろうか?

■ 一度見直してみると・・・

 皆さんの会社は社名、ロゴ、製品以外では、何で認識されるだろう?お客さんが入店した第一歩の音が、単なる雑踏でなく、計算されたそこだけで感じることが出来る「効果音・サウンドID」になっていたら面白いのでは?

 最近は大手量販店では「自前テーマ曲」を放送していることが多い。関係者に聞くと「JASRAC(日本音楽著作権協会)が厳しく、店内で歌謡曲を流す費用を節約するため」という理由もあるらしい。しかし、このテーマ曲が良いサウンドIDになっているのは確かだ。ある家電店の曲は、小学生くらいの子供に歌わせたているが、大人が歌うよりインパクトが強い。

 業種によってはサウンドIDを作る意味がない場合もある。しかし、可能であれば是非一度音を組み込んだ記憶への働きかけを研究してみてほしい。

 注)ただし、ホームページに音声を入れることは極力避けるべき。ネットをみる環境は人によって違う。音量を下げ忘れてネットにつなぎ、皆さんのサイトにアクセスした途端、「じゃ〜ン」と音楽が始まったら相当嫌われる。マルチメディアという言葉にだまされて、BGMを入れたりするのはサイトを運営している会社自体のセンスを問われる。 

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