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 こちらは、2006年までに発行されたメールマガジンの内容です。


■ 見せないことの持つ力

メールマガジンからいらした方、ここが「アタマに残る中小企業」で間違いないです。

 14回目のメールマガジンで「ロサンゼルス看板」について書いた。
 (参考:ロサンゼルス看板事情

 その中で、巨大看板に数週間掲げられたズボンの例をあげた。簡単に説明すると、巨大な何もかかれていない看板に小さくズボンを貼り付けたものが数週間に渡って放置されていた宣伝広告だ。

 皆が「なんだろう、あれ」と首をかしげていたある日、その看板に「ナイス・パンツ  ドッカーズ」と書き込まれた。同時に一斉に新聞・テレビ・ラジオの広告攻勢をかけ、知名度を一気にあげた話を覚えている方もいると思う。

■ 「なんだろう?」と思わせるのはお金がかかる

 道行く人に「なんだろう?」と思わせている間、このドッカーズは一円も儲けていない。なにしろお客さんが何だか理解していないのだから、何を買っていいのか分からない。野ざらしのパンツを見て「パンツを買わなきゃ」と思う人もいないだろう。この宣伝方法、意外にお金がかかるのだ。

 その変形型で、今回面白い宣伝広告戦略が行われていた。

■ ちょっと見せて、すぐしまう

 「ODYSSEY(オデッセイ)」と書かれた箱から、車がするすると1/4程出てくる。ところがその車はそこまで出た所でバックをし始める。悔しいことに車は箱の中に収まり、箱のフタは閉じられる。

 含みのあるナレーションで「く〜、はがゆい。いったいどんな車なの??」と思わせられる。精神的にとてもうっとうしい。

■ 「次に何かあるかも」

 この宣伝を何度か見せられると、

 「次こそ全部見れるかな?」

 と、別に興味がなくても期待してしまう。同じ宣伝が始まると「きっと今度のは新バージョンに違いない」と思うのだが、そう甘くはない。やはり車は1/4しか見せてもらえないのだ。でも、もしも「全貌を明らかに」する宣伝がひょっこり出てきていて、自分がそれを見逃したとなると悔しい。誰に悔しいのかは分からないが、とにかく悔しいに違いない。

■ 徹底した統一性

 発表前のホンダディーラーでは、このTVCMとの連動プロモーションを行っていた。連動というだけに、コマーシャルと同様何も見せてくれていない。

 宣伝広告を行う場合、このような統一性が必要になってくる。どこかで口を滑らす者がいてはいけないし、発表当日まで絶対に資料を配ってもいけない。徹底的にお客さんに歯がゆい思いをさせ、期待を持たせるのだ。

■ そして発表の日

 日曜の折込でも入ってきた。カラー写真でオデッセイの全貌が写っている。これで「いつ全貌を見せるのか」イライラして待つ日々も終わりだ。

 このプロモーションで「オデッセイは何か違うらしい」と多くの人の記憶の中に残っただろう。ちょうどミニバンを探していた人は「皆が発表を心待ちにしていた車」に乗って街を走る自分、それを見た街行く人が「あれが新型オデッセイだね」と注目する(かもしれない)想像を膨らませるだろう。

 もしもオデッセイをいの一番に手に入れたのなら、

「なかなか見せてもらえなかった”あの車”を私は”所有”してるんだ!」

と、特別なものを早期に手に入れた特権意識が生まれるに違いない。

■ その後

 僕の主観で申し訳ないが、正直に言ってどこが特別なのか、どこが”ネクストプロポーション”なのかが理解できなかった。流線型は今に始まったことではないし、立体駐車場に入る高さも珍しくない。もしかするとこう感じたのは僕だけではないかもしれない。車の形自体にさほど大きな驚きはなかったというのが本当の所だろう。

 しかし、そんなことは関係ない。ネットの時代だ。「あれ??こんなはずじゃなかったのに。ホンダはミニバンを発明しなおしたって言うくらいだから何かもっと秘密があるに違いない」と思ってホンダサイトに情報を求めてアクセスする人は多かっただろう。

■ 重要なのは興味を持たせること

 調べてみると、外観のカッコ良さではなく、もっと内的な改良が多いようだ。このあたりの情報は営業マンの口頭での解説か、ウェブサイトやカタログの文字情報で詳しく解説する必要がある。

 技術情報はお客さんにとって概ねつまらないもの。無理してCMで説明しないほうが効果的だ。オデッセイの場合「あれ、なんか期待外れ。でもそんなはずないだろう」とお客さんが情報を積極的に発掘するよう仕向けたというこうかも高いだろう。

 これで「いっぱい言いたいことがあるから、全部書いてしまえ!」とばかり、何でもかんでも言ってしまう宣伝がいかに面白くなく、安っぽく、相手に伝わらないか分かってもらえたはず。

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