■ ”笑顔”は”特色”にはならん!
メールマガジンからいらした方、ここが「アタマに残る中小企業」で間違いないです。
僕はいつも、中小企業にとって初めてのお客さんやお客さん一歩手前の人たちは”猜疑心”のかたまり、むしろ敵対的であると見ている。こう言うと気を悪くする人もいるだろうが、飛び込みで苦労している営業マンと同じくらい状況は厳しいと考えて損はない。状況はいつも悪く悪く考えたほうが、現実が楽に見えてくる。
そんな中でPRをする場合、”言葉”の大切さは最重要視されるべきだ。なにしろお客さんにリーチする手段は、言葉しかないからだ。
■ ある食事の宅配サービスのポスティング
我が家にも例外なくピザや寿司の宅配サービス会社からのポスティングが来る。
「またかぁ」
と思うんだが、突然友人が来たりすると「じゃあ、ピザでもとる?」という話になることも多い。アメリカでも、ピザ、中華、タイ、メキシコ等、各国料理の宅配が盛んで、よく利用していたので宅配は好きな方だ。同じピザでも倍以上(!)という価格は痛いが、実は助かっていたりする。
そのポスティングの中の一枚に軽い違和感を感じた。
■ 「必ず笑顔でお届けします」
チラシの表にはそう書いてあった。この言葉、僕なら絶対使わない。
なんだか、こう言われているような気になるのだ。
「明細書
マグロ 8個 1,155円
エビ・卵 各4個 840円
サーモン 8個 1,029円
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合計 3,024円(税・笑顔込)」
これって、イヤじゃないですか??
■ 笑顔は心
”笑顔”って、心から出てくるのでなければイミがない。それ以外は”愛想笑い”、”営業スマイル”という。こんなことロボットにだってできる。マクドナルドで笑顔で応対されても別にありがたくないのだが、仮に笑顔じゃない人がいると、あるべきものが欠けた不快感がでてくる。自分を含め、お客さんってのはそういうものだ。
だからわざわざ「必ず笑顔でお届けします」と宣言してしまうと、当然のこともできない企業が”仕事ですから、笑顔なだけです”と明言しているようなものである。
笑顔で配達するってのは、店側の朝礼で”確認”しとけばいいことであって、恩着せがましくお客さんに宣言するもんじゃない。そんな当たり前のことを口に出してしまうと、その言葉が伝えるメッセージは反転することだってある。小学生じゃあるまいし”笑顔で〜”は宣伝にはならないのだ。
(お客さんの苦情に笑顔で謝るだけの店もある。問題を解決したり、理解を得ようという積極的な意志がなく、ただ笑顔でいれば許されるという甘えさえ感じる。笑顔にはそういう笑顔もあるのだ)
■ 以前のメルマガで
ある家電店の宣伝を紹介した。「白いことは良いことか?」(http://cobeat.com/flyer/fly_0025.html)
ここでは、家電の配達時、白い手袋をつけてくるらしい。これは、既にお客さんの所有物となったお買い上げ商品を汚したり、傷つけたりしませんという意志と、
「素手で触るのは、お客さんが最初」
という、誰もが大好きな”新品の喜び”を文字通りに味わってもらう価値を持たせている。これが、”白い手袋と笑顔でお届け”と言ったら急にわざとらしくて臭くなる。
■ 大企業の例では
図のコミュニケーションで知られている久恒啓一氏は著作の中で、
「(要約)JALでは、”現場第一主義”という言葉を使おうとしていた。ところが”第一”という言葉が出てくる根拠を調べたところ、現場を第一にしてきていなかったという事実が浮かんできた。そこで、第一を外した『現場主義』が採用された」
という、氏がJALに居たころの経験を紹介している。JALのような企業でさえも、言葉開発の段階で違和感のある言葉に出くわすことがある。ただし、そこで止まらないで、細かい言葉がお客さんに与える印象を分析し、問題を発見し最良かつ簡潔な標語を考えている。
言葉の間違いは必ず出てくる。ただ、それをそのまま放置してしまってはいけないということだ。宣伝広告とは自社を代表するもの。その言葉をいい加減に考えて良いはずがない。