非常に古いコンテンツです。

最新のトップページはこちらです。


 トップページ > アタマに残る中小企業 > 記事

 こちらは、2006年までに発行されたメールマガジンの内容です。


■ 売らないことが宣伝になる?

メールマガジンからいらした方、ここが「アタマに残る中小企業」で間違いないです。

 社会の批難をあびて会社が成功することはあり得ない。

 それは、雪印・三菱といった大きな組織の例でもわかるように、もはや”悪評”に対しての逃げ道はない。常日ごろからの誠実な行動でしか身を助けることは出来ない世の中になった。もちろんこれは良いことなのだが、ささいなミスにまでつけ入ろうとする傾向があるのは情けない。

■ 売らないことで信頼回復をはかる企業

 先日、アメリカの食品業界の大手が、

「子供の肥満を助長する、子供にふさわしくない商品の宣伝広告を停止する」

と発表した。

 アメリカでは、朝の子供番組のCM枠で食品の宣伝が入ることが多い。それは、シリアルであったり、日本人の口には合いそうにない濃厚なチョコレートプリンであったり、チェダーチーズたっぷりの”マカロニチーズ”だったりする。一口食べればポンと太りそうな物ばかり。しかも、子供にとっては麻薬的に美味しいものらしい。

 これら商品は、当然のごとくアメリカ人の子供達の”人気商品”になっている。その食品の宣伝をしないと言うのだ!これはどういうことだろう?

■ 社会問題を無視すると

 アメリカでは随分前から肥満が社会問題になっていることはご存知の通り。旅行に行った方は出会ったことがあると思うが、日本人の想像を超えた太り方をしている人がいる。

 日本では肥満は個人の問題として、個々の努力で解決すべき問題なのだが、訴訟社会のアメリカでは、

 「ハンバーガーを食い過ぎて太った!」

という訴訟が成り立ってしまう。全てのケースで原告が勝てるわけではないが、一定の条件が成り立つと被告側の企業は恐ろしい額の賠償金を支払うことになる。その一定の条件とは何か?

■ アメリカの訴訟で負ける最大条件

 「企業が売上げを重視した結果として起きた事件・事故」

だ。例えば、以前ある大手ファーストフードチェーンが、持ち帰りのコーヒーがオフィスに戻るまでの時間に冷めきってしまわないようにすれば、コーヒーの売上げが上がると考え、コーヒーの販売温度を上げた。

 その後、ある女性がドライブスルーでコーヒーを買い、そのコーヒーを太股に挟んで運転していた時に事故が起きた。熱いコーヒーを”彼女の不注意で”太股にぶちまけてしまったのだ。女性は重度の火傷のため障害が残った。

 当然訴訟が起き、企業は莫大な賠償金を支払った。売上げアップのため、コーヒーの販売温度を上げた、その一点が勝敗を分けた。

■ 売らない戦略

 今回の自主的な宣伝広告停止戦略だ。

 まず、純粋にお客さんのためを思った方策でもある部分は大いに評価されるべき。しかし、企業がただそれだけで動いていては行き詰まる。

 おそらくこのパブリシティーの意味の一つは、訴訟時に有利に働かせる布石だろう。”私たちは健康への配慮を怠っていない!その証拠に過去こんな決断をした!”という既成事実があれば、訴訟時には強力な武器となる。

 そして、もう一つは”子供”だ。今回、子供向け製品の宣伝を停止した。そのニュースを子供が喜ぶだろうか?子供は無関心だろう。喜ぶというより、好感を持つのは大人(親)の方だ。買うか買わないかの決定は親に権利がある。お金を出すのも親だ。であれば、親が

 「あの会社は健康への配慮がある。好感度が高い」

というイメージを持てば、企業としてもありがたい。

 今回のように、宣伝をしないということが他社から抜きんでる方法となることもあるのだ。

■ 日本でも

 あるコンビニエンスストアーチェーンでは、地域的に深夜営業を取りやめにする考えを発表した。直接の理由は、夜間の利用が少なく、営業してる意味がないからというものだったが、コンビニエンスストアが若者のたまり場になり社会問題となっている現状を考えると、もう少し上手くPRしていくことで、企業の好感度は高まると考えているはずだ。

■ 社会問題に素早く対応すること

 環境や、健康、治安に素早く対応していく姿勢は、早ければ早いほど注目され、先駆者になれる。

 個人的には、犯罪に使われたり、自殺者を増やしたり、引きこもりを増やしているネットや携帯電話業界にはやるべきことが多いような気がする。

 とはいえ、まずアメリカで何か事件があって法的規制が入り、企業が対処した情報が日本に来て、それを参考に・・・というのが日本のいつもの流れなので、アメリカの動向を伺っているのだろう。しかし、そろそろ日本が世界に先行して事をなすようになってもいいのだが。

No. 90へ

CoBeat 2016 All rights reserved  企業を映画化する CoBeat