お客様は何を求めてモデルハウスに足を運ぶのかを理解して接客をする。

モデルハウスにご来場されたお客様の近くで、スタッフのような顔をして仕事をしている事があります。パソコンのキーを打っていたり、カメラを持っていたりしますが、私が

「いらっしゃいませ」

と挨拶するので、スタッフだと思われることもあります。
私が何をしているかというと、ホームページや広告制作のヒントにならないかと、お客様と営業担当者のやり取りを観察しながら会話を盗み聞き(すみません)しています。もちろん、工務店様には了解済みです。

モデルハウスにいらっしゃるお客様が知りたいこととは?

単刀直入にいいますと、

全てです。

金額のことも、ローンのことも何も知らない状態でモデルハウスにいらっしゃいます。または、「知らないふり」をしています。

営業マンはプロですから、しったかぶりをして話をするより、知らないふりをして話しをしたほうがより相手の“ウソ”を見分けることができる。そんな意志を感じることもあります。

「ウソ」ってなんだよ!

とおっしゃるかもしれませんが、初めてご来社されたお客様は物凄い警戒心とともにいらっしゃるのです。

「ここで何か書いたらしつこい営業をされるのでは(でも情報がほしい)」
「上手く丸め込まれて、何かにサインさせられるのでは?」

という防御のオーラがムンムンしています。
逆に、この防御のオーラが無い人もいます。
それは、

まだ家が欲しいかどうかも決めておらず、モデルハウスに遊び感覚で来ている人たち。

別の言葉で言えば、契約はかなり遠いかもしれないお客様。
家を気に入る気に入らないもない、営業マンと長く付き合っていく段階でもないので、適当にモデルハウスを楽しみにに来てます。
何か言われても最初から断る気でいますから、比較的簡単に個人情報も書いてくれます。防御のオーラがないのが傍で見ている私にも伝わってきます。このタイプのお客様は、楽しく気軽に見ていただけば気分良く帰って行かれます。いつか戻ってきてくださいね、と願いを込めて背中を見送ります。

大切なのは「防御オーラ」のあるお客様なんですね。

防御オーラのあるお客様のゴールはどこにあるかと言えば?

工務店関係者から本物の情報を仕入れたい、という気持ちです。
ここまで色々と自分で調べては来たものの、いまいち確信が持てない。
もうそろそろ予想ではなく、現実的にきちんと計画を立てていった方がよいのでは?

そんなことから意を決してモデルハウスにいらっしゃったのです。
まずはモデルハウスに一歩足を踏み入れて、挨拶をします。
モデルハウスではまず玄関で「こんなところだけは忘れず見ていってください」というリーフレット・資料と名刺をお渡しして初めて「ご自由に見てもらう」ことをおすすめしますが、もしここで大手の営業マンのように、お客様に着いて歩いて全てを説明するようなことをすると、逃げられてしまう可能性が高いです。

私が見学した有能な営業マンはこの状況で、お客様にしばらくモデルハウスを自由に御覧いただき、頃合いを見て展示場の感想を聞き、そこからお客様の興味にとっかかりを見つけて、

「あ、そういえば。その、○○についてのいい資料があるんですけど、こちらでお待ちいただけますか?」

と着座させてしまいました。そこで、他のスタッフに飲み物の好みを聞きに行かせる。彼はいつも資料集めをしっかりとされていて、自社の家を好む方の興味もよく理解していました。だから、

資料がある

というのはウソではなく、しばらくしてから紙資料があるときは紙資料を、無い時にはiPadなどを持ってきてお客様に見せます。お客様にとって興味がある内容なのと、そのモデルハウスの仕様説明(売り込み)ではないので、いつの間にかお客様の防御オーラが下がり、個人的なお話しもしてくれるようになっています。共感の引き出し方に感心してしまいます。

そこまで来たら、彼は巧みに具体的な話に入っていき、ついには

「当社に可能性ありと見てお話しをさせていただいて良いか?」

とまで切り込んで聞いてしまいます。もちろん二の足を踏む方もいらっしゃいますが、「そうですね」とおっしゃる方も当然出てきます。ここまで返答いただければ、相手が真剣なら真剣なほど具体的な話にはいっていけます。

この冒頭で、お客様はモデルハウスで何を知りたいか?の答えが

全てです

と申し上げましたが、実は「モデルハウスの仕様以外の全てです」と答えたほうが良かったのかもしれません。

先ほどの営業マンは自社の話ではなく、お客様が知りたい家づくりの知識やお金の話、お客様の好み、モデルハウスの感想、そんなことを聞いていただけなのです。

「当社の何々はですね!」

という話をせず相手に信頼されるのは、売り込みだけが目的ではないことが伝わるからなのかもしれません。彼の接客は見ていてとてもエンターテイメント性を感じました。(笑)