工務店寄りでウソっぽくなりがちな「お客様の声」に現実味を加える意外な方法。

「お客様の声」って、本物のお客様の声であっても、なんとなく嘘っぽいと思われがちです。

それは、以前健康食品系の通販で、捏造されたお客様の声が掲載されているのが発覚した事件や、内部の方々が

「あの会社のお客様の声はウソばっかり」

と告発したり、ネットの“特定班”と呼ばれる方々が

「同じ人の顔写真が別名で出ていた!」

と、アイデンティティーのウソを暴いたりということが重なり、消費者の頭の中で

「お客様の声はウソ」

というイメージが出来てしまったのかもしれません。
それだけでなく、工務店のホームページに掲載するお客様の声は

そもそも建築事後の人間関係が上手くいっているお客様にしか頼まない

という当然の事情もあります。
大きなクレームになったお客様にインタビュー!なんて「空気読めよ!」と言われてしまいますから。もちろん、大きなクレームから回復したお客様の体験談には大きな価値がありますが、声の掲載に同意した時点でやはり“工務店寄りの人”と受け取られてしまう。
何が書いてあっても、工務店の自画自賛のように見えてしまうわけです。

今の消費者の目は厳しくなっている

そんな中で、お客様の声に現実味を与える良い方法があります。

お客様の声ではなく、お客様を紹介する

2010年頃、ある中古外車専門の地方では規模が比較的大きなチェーン店がありました。
現在は、大手に吸収合併されて社名が残るのみとなっています。

私は、当時、その会社が運営していたホームページ(現在は親会社と統合)のコンテンツの更新を楽しみにしていました。そのコンテンツは、

「お客様紹介コーナー」

でした。注目すべきは「お客様の声」ではなく、徹底的に「お客様紹介」なのです。

画面の編集は、当時の小さめのモニターで見られる最大のサイズを使い、プロカメラマンが撮影した写真を大きく掲載。見出しをゴシックの太字で写真に重ねる感じ。

まさに「雑誌の見開き的」な編集でした。

そこでは、購入していただいた“外車”に焦点を当てるのではなく、オーナーの日常・仕事に焦点を当てていまいた。

その日常の中に商品としてこの会社が売った“外車”のある風景を混ぜています。

あたかもこのオーナーが全国誌を飾る成功者や、“デキる人”のような扱いで、とてもファッショナブルでした。もちろん、取材を受けていた人は必ずしも全国誌を飾る成功者ではなく、普通の職業のサラリーマンという場合もありました。そして、

購入されていた車も数千万円単位のスーパーカーではありません。

今でもデザイナーなどクリエイターに人気のある数十年前の外車で、車体価格7~80万円の時もありました。

憧れの外車に少しでも安く乗りたい。安心して購入できるお店で買いたい。けっして、お金がないから妥協して古くて安い外車を買うのではなく、あくまでも自分の思い入れの強い外車に乗っているという、お客様のちょっとした見栄も理解し、対象とする顧客層の安心感や信頼感、羨ましいという気持ちを醸成すべく、上手くまとめた企画でした。

取材はプロカメラマンと編集者が、家庭・職場・レジャーに同行していることもあり、かなりの予算を割いていたのをうかがい知ることができます。そのクオリティーの高さから、自ら「出たい!」と協力を申し出る方もいらっしゃったようです。

ここまでのクオリティーを工務店のホームページで作るのは、費用対効果の面で全くおすすめしません。自社で制作出来る場合はこの限りではありませんが。

ですが、この考え方を取り入れることは可能です。

お客様の声というと「工務店や家に焦点を当てる」ことが多いので、あえて“施主様の日常”に焦点をずらす。

家はただの背景であって、主役は施主様。

工務店を褒めたり「この会社なら安心ですよ!」と言わせるのではなく、

工務店や家が良いのは当たり前
そこで毎日起きている日常が重要

という雰囲気を作ってしまう。
すると、紹介した施主様の考え方や趣味趣向、主義、生活レベル、文化レベルなどが自然に伝わります。日常の中に見え隠れする情報から、家の価格帯のイメージもつかみやすいはずです。

施主様が考え方のしっかりした人だと感じたり、共感したり、自分と似ているなと感じていただければ、その人の判断基準も信じるようになります。

こんな人が選ぶ工務店なのか・・・

と思ってもらえれば、御社が自分に合っているか合っていないか、良い工務店かそうでないか、無理に誘導することなく“感じてもらえる”ようになりやすいです。

冒頭でも申し上げた通り、お客様の声は客観的な声ではありますが、遠巻きな自画自賛と受け止められてしまうこともあります。特に、これからの家づくりの世代は、ネット上の情報に厳しい目を向ける傾向がありますから、

「この工務店でよかった!」

と言わせないお客様の声コーナーを作っていくことで、現実味を加えることが出来ると考えています。