何のCMだったのでしょうか?
おそらく豆腐だったと思いますが、
「畑の牛肉 いただきます」
というキャッチコピーが忘れられません。
ひょっとして、ローカルCM・・・だったんでしょうか。(^_^;)
それはともあれ。
大豆にはタンパク質が豊富に含まれていて、それがまるで牛肉のよう!
そんなイメージが一気に伝わってきます。
最近はそんなことはないと思いますが、40代の方々にとっては
肉には格付がある。(笑)
牛肉って言ったら、肉の王様だったわけです。
いまでこそ、豚も鳥も値段に関係なく美味しく、それぞれの“味”を楽しむようになりましたが、当時は牛肉の持っていたイメージは高級品。だったら、
畑の中のキングといったら大豆でしょう!
と持ってきた。分かりやすいです。ここであえて、
畑の王様
としなかったところがさらに良いです。
調べてみても、このCM自体のことを記録したものが見つかりませんでした。ただ、
「畑の牛肉」
という表現はこのCMのクリエイターが考えたものではないようで、海外でも似たような表現があるそうです。
家の良さを様々な言葉で伝える試み
家づくりをお客様に伝える時、
- 素材の良さ
- 価格の適正さ
- 技術の高さ
- オシャレさ
- 提案力
など、アピールポイントは多いです。
中でも地震の多い日本、特にあの震災の後では
家の強さ
に関心が集まっています。
大手は巨大な実験施設で実物大の家を試験機器に載せ、大地震を再現して“従来の住宅”を破壊する様子を見せたりしています。自社の建物は平気。
「だから」当社の家は安心なんです。
という論調で説得していますが、誰も彼もがそんな実験をすることはできません。実際に実験してみたら工務店の作る家も強いということだってあるのに、ここは競技会ではありませんから、他社がどうだろうが関係ないのです。残念ながらPRが派手な方にお客様の目は向いてしまいます。
工務店ではそれに対抗すべくこんな感じの言葉を使っています。(こちらは実例ではありません)
「震度○の地震に耐える家」
「地震バリアの家」
「地震ブレーキ搭載の家」
でも、いまいち伝わってこないなぁと感じていました。結局、どこも同じことを言っているように聞こえてしまうのです。
震度○に耐える、というのはだいたいどこでも言っていますし、人間の記憶ってとっても曖昧で、大きな地震があってしばらくすると「あの時の震度っていくつだったっけ?」となってしまうほど。せっかく具体的な数値で表現しても、その数字に大きなインパクトがなくなってしまったら、別の方法を探すしかありません。
工務店のホームページリサーチで出会う発見
ある時、千葉県の工務店ホームページを見ていて、凄く気になる表現に出会いました。(掲載許可をいただけたので、そのまま使わせていただきます)
「消防署レベルに地震に強い家」
(掲載許可:有限会社 渡辺忠雄工務店様 URL:http://www.wata-nabe-koumuten.com/e84.html)
???消防署レベル??? なんかすごそう。
この言葉を読んで私の頭に最初に浮かんだのは、東日本大震災で骨組みだけ残った
南三陸町防災対策庁舎
でした。多くの命を奪った津波の中で壁を全て剥ぎ取られたあの建物は鉄骨でしたが。でも、消防署は日本全国どこも普通の住宅よりずっと強く作られているだろうということは、素人の私にだってすぐに想像できます。
その普通の住宅よりずっと強く作られている消防署レベルの強さを持つ家
ひねりにひねったキャッチコピーは、面白味があっても伝わらないことが多いですが、“社会”が持っている既成概念を利用したコピーは強力です。
消防署の建物 = 強い
ただこれだけのことは、誰もがイメージとして持っていますし、日々通勤時などで消防署の前を車で通るたび、無意識のうちに感じていることです。
この既成概念をそのまま使えば、回りくどい説明は不要です。
既成概念を味方につけて、お客様の考えるプロセスを減らす
みんなが牛肉に憧れに近い感情を持っていた昭和時代のコピー、
「畑の牛肉」
既成概念のみならず、大地震でその強さを印象づけた“消防署”と同レベルの強さの家。
「消防署レベルに地震に強い家」
何か共通点を感じます。
キャッチコピーを考えるとき、とかく「かっこいい言葉」や「聞こえの良い言葉」、外国語の感じの良い言葉などを選んでしまいがちですが、本当に強いキャッチコピーは、
本当の姿をそのまま書く
ことだと思います。
それにお客様が持っている既成概念を利用すれば、無理に共感させようとしなくても良いコピーになるんですね。