家づくりを始めたばかりのお客様とお話ししていると、いつの時代も同じような先入観を持っていることに気づきます。その他、映画などでみた憧れのシーンを再現したいという、理想と現実を理解した上での決断なのかがよく分からない希望などを聞くと、
「担当者さんこれは大変だな」
と思います。実際、夢を壊さないように上手く誘導する接客をされている担当者さんを見ると、そのコミュニケーション能力に関心します。
先入観や憧れの中でもよく聞くのは、
1.吹き抜けは寒い(暑い)
私も家を建てる時そう思っていました。
ただ、友人が住んでいたL.A.のユニオンステーション近くの倉庫を改造した、天井の高いアーティストロフトにあこがれて、何が何でもでっかい吹き抜けの家を作ろうと決めていました。
寒かろうが暑かろうが、関係ない!
私の担当者も「吹き抜けはそれぐらい覚悟がないと」というので、凄い覚悟で作りました。
「きっと後悔するんだろうなぁ・・・」と思いながら。(-_-;)
私の家は一階はひとつづきの大きなリビング・ダイニング・キッチンだけ。それが6mx3mの吹き抜けで二階と繋がっています。吹き抜けの先も全部繋がった空間なので、言ってみれば
大きな倉庫の中にロフトをつけた、あの構造
です。大工さんも「この家、寒いぞ~」とニヤニヤしていました。
高級な家ではなく、ローコスト寄りの家ですし・・・。
かなり心配になってしまいましたが、計画通りの吹き抜けを作りました。
ところが、住んでみたらなんてことない。
冬は、ちょっと大型(200V)タイプのエアコンを軽く動かし、メインは4.5畳用の石油ストーブのみでポカポカです。
シーリングファンを回したら、二階も暖かい。
多少、上着は着ますけどね。
夏は、エアコン(26~27度)をつければ、寒がりの私にとっては寒いくらい。
シーリングファンを回すと、撹拌されて逆に暑くなるのは予想外でした。
私の場合は、吹き抜けで不安だったのは耐震だけ。
担当者には「地震がゆすって逃げる時間だけ確保してください」ってお願いしたら苦笑いされました。近所で一番最初に崩れる・・・なんてことにならなきゃいいですが。(笑)
ちなみに愛知県ですから、吹き抜けに関しては寒い地方だと状況は大きく違うと思います。
2.リビング階段の先入観
これもよく聞きます。
ただ、お客様家庭の人間関係が非常に大きく影響しているようです。
思春期のお子さんがいる家庭でのお話。
私の家に遊びに来た息子の友達に聞いた話です。
「家に帰るのがイヤ」
親子関係は思春期にはどこの家でも多少ややこしくなります。
ですが、この子の悩みは、
「親ウザい。特に、親と顔を合わせたくない時や、学校で嫌なことがあって一人になりたい時も、ひっそりと自分の部屋に行けない。」
これがリビング階段の面倒なところです。
「何か嫌なことがあったら親に相談しなさいね」と言われても、まずは一人で悩んだり悲しんだりしたい時があるらしい。落ち着いてからじゃなきゃ、親にも話したくないという気持ちがあるのだとか。親になんか話さないって子もいます。
外で辛い思いをして、うちに帰ってきてダメ押しされることもあるようです。
「暗い顔をして階段を上がって部屋に行くと、後ろでお父さんの声がきこえる」
『なんだ、あいつ暗い顔をして』と少し怒った口調で言っているところを聞くとつらい。後から相談なんてできないし、心配してくれている親に対しても腹が立ってくる。問題なんてないという演技をして、自分の部屋に行かなければならないんです。
リビング階段に凄く憧れている!重要だ!ぜったいにリビング階段にしたい!と言っている親や配偶者の横で、
「ほんとはちょっと嫌だな」
と思っても口に出せない。
そもそもそんな問題が出てくることは予想していなかった。
そんな事情も担当者さんだけには理解してもらいたいところですよね。
3.アイランドキッチンの先入観
「アイランドキッチンにしたい」という言葉も最近よく聞きます。
流行っていますよね。
海外のドラマなんかにもよく出てきます。
アイランドキッチンを囲んでパーティー・・・。
ただこれ、本当に大丈夫なのかな?って思います。
映画制作の前後のパーティーで上層部の方々の豪邸が使われたのですが、そこでもアイランドキッチンってほとんど見たことがないんです。私がたまたま行ったところがそうだっただけかもしれませんが。
ただ、アイランド(作業台)はあるんです。
切ったり混ぜたり、捏ねたりという作業や、クックウェアを使う場所です。
キッチンとダイニングは別室なんていう、私には夢にも描けない家という事情もありますけれど。(-_-;)
でも、そんな家でもシンクやコンロやオーブンは壁についている。
アイランドキッチンは片付けが面倒くさいし、全部お客様に見えてしまうんですよね。
おしゃれな家にしたいから、カラフルな台所用洗剤なんて置いておきたくない。だから、ガラスの容器に入れ替え・・・水は飛ぶ油は飛ぶ、材料は飛ぶ・・・。
先ほどのリビング階段と同様に、夫婦喧嘩をしても絶対に顔をリビング側に向けなければ台所仕事もできない。夫婦喧嘩の頻度が少なければ、そんな心配する必要もないんですが。(笑)
そう言えばアイランドキッチン、見たことあります。
テレビ局で働いていた頃、料理番組のスタッフだったとき、料理の先生の教室で撮影がありました。そこはアイランドキッチンでした。でも、それは別の目的でそうなっているわけです。
4.二階リビング
傾斜地にでも建っていれば別ですが、二階リビングは日本には馴染みがありません・・・というのも先入観になる場合があります。
ある経営者と話していたとき、
「私はね、二階リビングを強くおすすめしているんですよ。ウチは昔鉄工所をやってて、住居は必然的に2階だったんだ。二階リビングなんて洒落たものじゃないけどね。だけど、24時間外から見られないから、気楽なんだよね」
なるほどと思いました。
“居間”は1階にあるべき、そんな先入観を解いてもらえたら、二階リビングが奇をてらったものではなく、急に魅力的になりました。
担当者にこそ知っていてもらいたい
こんな先入観、色んな所にあります。
その先入観のまま、お客様にかっこいい家を見せても
「え~?なんか無理してるっぽい。カッコつけすぎ」
と言われてしまうこともあります。
すると、「この会社はあまり生活のことを考えていない」と心が離れていってしまいかねません。
先入観を御社の経験と実例で取り払って、メリットデメリットをお話ししてから格好いい家を見せたら、より魅力が増すのではないかと思います。