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 こちらは、2006年までに発行されたメールマガジンの内容です。


■ 宣伝にみえない心理宣伝

メールマガジンからいらした方、ここが「アタマに残る中小企業」で間違いないです。

 「宣伝」と聞いて何を思い出すだろうか。

 ・ 新聞・雑誌
 ・ 折り込み
 ・ テレビ・ラジオ
 ・ 看板

こんなところだろう。しかしこれらは見る側、つまりお客さんの側からすれば、明け透けな「宣伝行為」になっている。もちろんこれを否定してはもともこもないのだが「宣伝行為」に猜疑心をもっている今どきのお客さんにアピールするのは難しくなってきている。

 もしあまりお金をかけず、しかもお客さんにとっては「宣伝にみえない」、更に「気になって行ってみたくなる」宣伝があったら魅力的ではないだろうか?

■ 「1億円当たった宝くじ屋」

 あるところに一億円があたった宝くじ屋がある。宝くじ屋の宣伝文句としては珍しくないが、そこは夜通ると煌々と照明がともり、4つほどある窓口にはパートのおばさんが座っている。国道沿いのその店は、立地条件もよくとても目立つ。しかも、ちょうど慢性的に道が混みやすく、近くに信号もある場所なのだ。自然、お客さんは信号で停車中にその店を見つけ、ゆっくりとその店の前を通ることになる。これだけ良いお膳立てができていれば繁盛するのは当然といえば当然だし、「当たった」という実績があればクチコミでも広がっていくだろう。

■ 「大型宝くじ」発売の日

 大型宝くじ発売日の夕方、偶然その店の前を通りがかった。道端にはその宝くじ屋が雇った3人の交通整理のおやじさん達が立って「駐車場は裏」というプラカードを持ち、誘導灯を振っていた。時刻は夕方6時、予想に反して窓口には人影は少なかったが、それでも10人はいただろう。もちろん宝くじマニアは「早く買う方が当たる」と思う傾向が強いので、朝は相当混んでいたはずだ。

【 突然ですが、問題 】

 何気なく話した今の段落の中に心理宣伝が入っていたのだが、気づかれた方はいるだろうか?宣伝にみえない宣伝の仕掛け、その答えは

 ○ 「交通整理のおやじさん達」だ。

 あまりに普通のことすぎて気づかなかった人は多かったのではないだろうか。もし気づいたのであれば、相当な想像力を持っているといえる。

■ おやじさん達の役割を分析

 これを誰が発案したのか、おやじさん達を取り巻く環境には巧妙な心理宣伝の仕掛けが張り巡らされている。

 まず、おやじさん達の服装と装備。服装は薄水色のシャツに紺色のズボン、ヘルメットに夜光ベスト。どこから見ても「純粋な交通整理の仕事」にしか見えない。次に赤い誘導灯を振るのは、おやじさん達に視線を向けさせるのに有効だ。最後に目に入るのはこのおじさん達の持っている「駐車場は裏」プラカードだ。先程も言った通り、ちょうど道が混む地域なので、

 「なんだ?宝くじか。駐車場もあるのか。ちょっと買ってみよかな」

と考える余裕がある。そうでなくても、そこに駐車場完備の『当たる宝くじ屋』があることはお客さんの頭にインプットされる。

■ 舞台装置

 朝は、多くの人が通勤途中の車からこの店のにぎわいを見ている。

 「交通整理まで出るのだ。この店は凄いんだろうな」
 「そういえばこの店、あの人が言ってた店かな?」
 「宝くじってあんなにたくさんの人が買うのか」
 「道が混んでうっとうしいなぁ・・・」

 思いは様々ながら、知らないうちに人は「このお店は凄いらしい。どうせ買うならここで買おうか」という気になる。存在を知らせることができる。

 夕方ともなると、明るい照明の店が舞台装置になる。背後に光源があれば、その手前の物体はシルエットになる。つまり「赤い誘導灯」を持っているおやじさん達のシルエットが浮き出て目立つということ。車で遠くから接近するお客さんにとって、これが気にならないはずがない。しかも、ちょっと物々しい雰囲気まである。興味を魅かれて当然だ。

■ 「宣伝」ではなく「お客さんの安全のため」

 前に「巧妙な仕掛け」と書いたが、もしかするとお店側は全くこんな宣伝効果を意識せずに行っているのかもしれない。

 「商売繁盛はいいけど、道が混むとお客さんに迷惑だし、評判も悪くなるだろう。だから大型の宝くじの時は交通整理を頼もう」ただこれだけの理由で始めた可能性は高い。あくまでもお客さんのためであり、地域に迷惑をかけない配慮なのだ。だから、無欲の勝利というべきか、期せずしてイメージアップ効果を上げることができたのかもしれない。

■ 「なんだろう?」と思わせる雰囲気作り

 明るい店の前で「駐車場はこちら」とかかれたカードを持った3人のおやじさん達に「なんだろう?」と注目させる手法。これは、スーパー等の実演販売や、ラーメン屋の行列、家電屋の「特売整理券配り」等と同じ、”誰かが立ち止まると、他の人も立ち止まる(誰も立ち止まらないものには、人は集まらない)”法則の一つだ。

 お客さんは、企業側の宣伝広告に対しては猜疑心を持っている。しかし、自分と同じ立場である「他のお客さん」の動向はしっかり観察している。時にはそれが商品を選ぶ判断基準になることもある。特に同種の用途の製品がずらりと並び、選択の基準を持ちにくい時代には「たくさんの人が買っているから間違いないだろう」「この人が言っているのだから間違いないだろう」という心理が依然強く働くことは覚えておいたほうがいい。「交通整理」というさりげない方法で、その心理を演出することも可能なのだ。

 一人10色、多様性等という言葉が飛び交うなか「全ての人に対応できるはずがないじゃないか!」とパニックになるのではなく、うまくお客さんの選択肢にあがり、多くの人の支持を得られる「宣伝にみえない心理宣伝」はこれから益々有効になってくるにちがいない。

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