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 こちらは、2006年までに発行されたメールマガジンの内容です。


■ 特別扱いでジェラシーを

メールマガジンからいらした方、ここが「アタマに残る中小企業」で間違いないです。

 宣伝広告は「不特定多数(または特定多数)」の新規のお客さんを対象に行うと思いがちだが、実は”既にお客さんになっている方々”を対象に、今より更に自社に対する親近感を強める方法もある。

■ J-Phone > Vodafone の宣伝に見る

 J-Phon がVodafoneになったとき、かなり大掛かりな宣伝広告が行われたのは記憶に新しい所。

 まず、テレビでは、社名が変わる瞬間を一大イベントに見立てた盛大なコマーシャルが放送された。

 中心街に人があつまり、赤いVodafoneのロゴが出てくると紙吹雪が舞い大歓声が沸き起こる。正直言って、消費者にとって社名が変わることは非常に紛らわしく、煩わしいことのなずなのだが、その焦点をぼかすことで不利を逆に利用してしまったといえる。

 この社名変更自体は純粋に企業側の事情だったはずなのに、あたかも待望していたすばらしいことが始まるような錯覚を起こさせる。J-Phoneのお客さんは、このすばらしいイベントの一部になれたことで他社ユーザーより優越感を味わうことができる。

 「社名なんか変えられたら、オレの携帯どうなるの。J-Phoneロゴのまんまじゃん!」

という不便があることはいつの間にか大きな動きに飲まれてしまったかもしれない。おそらく「Vodaphoneロゴの携帯にしたい!」と機種変更された方々もいたはずだ。

■ 街にあふれる赤看板

 しかし、この宣伝も単純に社名を見せるだけではいけない。今や携帯電話はファッションの一部になっているのだから、J-Phoneユーザーが優越感を感じるためには「ファッショナブル」である必要がある。そうすれば、最先端のファッションムーブメントの一部になっているような安心感を持たせることも出来る。

 この宣伝ではもう一つ重要な演出があった。世界を巻き込んだイベントのような雰囲気作りだ。

 社名変更までの世界的スポーツイベントでのロゴ露出、国際的なスポーツ選手とブランドの重ね合わせ、社名変更後の駅の構内や、街角での赤ロゴ露出等も大々的に行われた。

■ 宣伝と”現実”との接近

 テレビ以外の実社会、しかも「ご近所」での大きな変化を目の当たりに出来ることで、テレビの中の現実味のない他人事が、突然リアリティーを持ってくる。

 実際僕の住んでいる地域(田舎)でさえもこの変化があった。ちょうどPHSを携帯電話にしたいと思っていた時期だったためとても気になった。言ってしまえば、Vodaphoneのファッショナブルさと、目新しさと、お客さんの特別扱いにVodapohneにしようかなとも思った。結局価格設定が自分にあわなかったため別の会社にしたのだが、関心はかなり高かった。

■ 他社ユーザーの本音

 消費者心理の研究のなかに「フェスティンガー効果」がある。これは、

”あるCMを喜んで見るのは、既にその会社の製品ユーザー達で、別の会社の製品のユーザーはCMの間中イライラして早く終わることを望んでいる”

というものだ。たとえば、ある車を既に買った人が、自分の愛車のテレビコマーシャルを見ると、自分の選択が正しかった、こんなすばらしい車が自分のガレージにあるんだ!という満足感を味わう。既にその車を買ったにもかかわらず、その宣伝を楽しみにしているという結果がある。

 ところがそれ以外の車を買った人は、自分の選択が間違っていたかのような嫌な気持ちになり、早くその宣伝が終わってほしいと思う。もしくはテレビのチャンネルを変えてしまうこともある。

 今回のVodaphone宣伝で、そんな気持ちになった人も多いはずだ。

■ 応用は出来るか?

 Vodaphoneの宣伝をまねすることは現実的ではない。莫大な費用を要し、また組織力も必要になるのはわざわざ説明する必要はない。

 ここまでせずとも公然と自社のお客さんを特別扱いすることで、既存のお客さんの自尊心をこそぐり、また他社のサービスを受けている人に「いいなぁ」と思ってもらえる方法があるはずだ。しかし正直なところ、これはかなりのチャレンジになるといって間違いない。

 他社のお客さんに不快感を抱かせることのないよう、けっして品のない”比較広告”にしない配慮は必要だろう。

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