■ カリスマ志願?スター性の謎
メールマガジンからいらした方、ここが「アタマに残る中小企業」で間違いないです。
今回は役者の世界からキャラクターの作り方を考えてみたい。役者は人の印象に残る技術をどのようにして体得しているのだろうか?
といっても、意図的に”キャラクター性”を付けようとすることは、わざとらしい奴のレッテルを貼られてお終いなので、自然に出てくるキャラクターでなければその時点でアウトとなることは付け加えておく。(ただ、誰にでも潜在的なキャラクターはある。問題はその表現方法が真似になっていてはだめだということ)
■ ある少女の初オーディション
日本ではあまり馴染みがないアメリカの大スター、バーバラ・ストライサンド。無名時代の彼女がオーディションを受けた時の「伝説」がある。
まだ少女だったバーバラは、オーディション会場のドアを開けた。審査員はドアの開く音で卓上の書類に落としていた目を上げる。そしてその少女の態度に顔をしかめた。
少女は嚼むたびに顔が歪む程大きなチューインガムを嚼んでいたのだ。審査員達は目を疑った。
『なんて態度だ。この子はこの会場に何をしに来たんだ?』
少女の態度の悪さはガムを嚼むことだけに留まらなかった。審査員の問い掛けに面倒くさそうに答える。さもつまらないところに来てしまったとばかり、部屋をじろじろと見回す。審査員達の怒りは頂点に達する。オーディションは早々に終了し、少女は退室を促される。
■ 少女の思うつぼ
少女は起立直前に最後の暴挙に出る。
終始噛み続けていたチューインガムをイスの裏側にくっつけ、席を立ち、さっさと部屋から出ていってしまった!
これには審査員は我慢ならなかった。彼らは映画の都、ハリウッドのプロデューサーだ。こんな侮辱は生まれてはじめて。ましてや10代の少女に!怒り心頭の審査員は立ち上がり、少女が今まで座っていたイスに歩み寄り、イスを掴むと勢いよくひっくり返した。
「!」
イスの裏には何もついていなかった。あるはずのあの大きなガムはどこにもない!
なんと少女は敏腕プロデューサーを相手に”演技”をしていたのだ!
■ もっと小さな少女も
まだ言葉を覚えたばかりの小さな女の子がある映画のオーディションに来た。審査員はある有名映画監督。少女は物おじすることなく、その映画監督の前でオオボラを吹き始める。
「自分はロックスターで、ツアーで全国を回っている」といった嘘をストーリー性豊かにつきまくる。あまりの面白さに、映画監督とその他スタッフは様々な質問を投げ掛けるのだが、そのふてぶてしい幼児は「ふてぶてしいロックスター」になりきって全ての質問に答える。言うまでもなく、幼女はその大役を手に入れた!
その幼女の名はドリュー・バリモア。有名映画監督とはスティーブン・スピルバーグ。その映画はあの有名な「E.T.」である。
■ 二人の共通点
バーバラ・ストライサンドもドリュー・バリモアもそのオーディションをものにした。二人に共通していることは、役者の言葉で言うところの「アティテュード(態度)」があったことだ。
この二人が従順な態度で、
「はいっ。はいっ。はいっ!」
と何でもハキハキ答えていたとしたらどうだろう?”印象良く見せよう”とする他の人達と何の違いもなく、印象づけることが出来なかったに違いない。
日本のアイドルでも、売れる前の写真を時系列に並べてみると様々なキャラクターを試して、ようやくたどり着いた結果であることが良く分かる。これも一度研究してみるととても面白い。
■ 印象づけの方法として
ここで、はやとちりされて困るのは、ふてぶてしい態度を取ればいいという短絡的な考えになってしまうこと。当然、そんなことをここで言っているわけではない。
今あたりを見回して、自分と同業者を比較してみてどうか?例えば、横一列に並んだキャッチコピーを使って同業他社と同等でいることに安心していたり、自分の特徴を表現していないPR方法を続けていないか?
今日のハリウッドの2人の例は、エンターテイメントの世界で主役になるのに有効だったアティテュード。自分の目的を達成するために必要なアティテュードとはなんだろう?一度考えてみて損はない。