■ 多様化の時代って、ほんとかなぁ?
メールマガジンからいらした方、ここが「アタマに残る中小企業」で間違いないです。
多様化の時代と言われて久しい。でも僕は釈然としない。どうも本当に個性のある人達が沢山いるように思えない。特に若者は個性を主張するようになったと言っているけど、ひょっとするともっと単純に考えることが出来るのかもしれないと思っている。
■ 高校(中部圏)の自転車置き場を見たことがあるか?
今、高校の自転車置き場にはそれこそ端から端まで
「銀色の自転車」
で埋め尽くされている学校が多い。これは、わざわざ観察しにいってきた結果。別に校則に定められているわけでもない。僕らの高校生の頃は、それこそ皆違う自転車に乗っていた。黒だったり、赤だったり、変速機付きだったり、ハトブレーキ(ワイヤーのかわりに金属の棒がついている)の自転車だったり。まさに色々。
ところが、今の高校生はシルバー一辺倒。制服があるとはいえ、靴下、髪形、髪色、全て似たり寄ったり。市場にそれしか選択肢がないからだ、というかもしれない。しかし、世のマーケティングの先生方が言っているのは「選択肢がないと買わない」のではなかったっけ?
実は、選択肢があってもみんなと一緒がいいって市場が言ってるのでは?
■ 多様化を乗りきる法則
とはいえ、この多様化する”個性””嗜好”の時代に、全く苦もなく対応している企業がある。男性アイドルを生み出し続ける「ジャニーズ事務所」だ。(芸能界に疎いのと、情報にアンテナをはるのは話が別)
ジャニーズのアイドルは複数人のグループであるのは、単なる偶然ではない。これは、色んな好みを持つファンを一網打尽にする作戦が隠されているはずだ。ジャニーズに多様化を乗りきる法則を見てみよう。
■ 結局は”選ぶ”のが消費者
先程”選択肢があってもみんなと一緒がいいって市場が言ってる”と書いた。でも、やはり”選択”は無視できない。例えばスーパーの棚に、
”ア社・イ社・ウ社・エ社・オ社”
のラーメンがあったとする。お客さんは、
「オレはア社が最高〜!」
「ワタシはオ社ね」
こんな具合で、お気に入りのラーメンを選ぶ。すると、イ〜オ社はア社を選んだお客さんには見放される。鋭い方はもう先が読めたと思う。
■ 自社製品内で選ばせる
多様なファンの好みに合わせて、アイドルを一人生み出すのではなく、暗いのや明るいの、態度が良いの悪いの、カッコイイ系や愛想系、色男系や男気系。こんなのをごちゃまぜにして一つのグループとして売り出せば、ファンが、
「ワタシは○○君がいい」
「えぇ〜。ワタシは絶対○○君」
好みが違えど、同社製品・同ブランドの製品。アイドルが5人一組なら、お客さんは”その中でこの人派、あの人派”と別れるだけ。他の事務所のタレントへ人気が流れるのをかなり抑えつつ、ニーズを満たしている。
とはいえ、ジャニーズはひたすらお客さんに合わせる愚は犯していない。むしろお客さんの選択の幅を狭めて対応している。決して”あなたに合わせてカスタマイズしたアイドルを提供します”なんて言わず、
”人間の好み・傾向は、この5人に分類される。だから、あなたに合うアイドルがグループ中必ず一人はいるでしょう?”
お客さんの目に触れる前に”取捨選択”の作業は完了している。最後のトッピングだけを、さもお客さんに全ての主導権があるかのように演出しているだけ。巧みな消費者教育(皮肉ではなく)だとしか言いようがない!
■ 結局のところ
全ての消費者がデザイナーではない。クリエイターでもない。手先が器用でモノ作りが大好きな人ばかりでもない。ましてや個性的でもない。
本当の個性派は”自分で作る””自分で開発する”という、起業家みたいな人達。起業家の気質のある消費者なんてそれほど多くない。その証拠に”難しい”はずの若い世代にも、モノの見事に右へならえをしてしまう国民性は根強く残っている。
多様化といっても、最後には必ずお客さんはプロであるあなたに、”最良の道”を教えて欲しいと受け身になる!そのときジャニーズのように、最後のトッピングでお客さんの”個性”を満足させる演出ができれば、多様性への対応は完了だ。
実は”あなたに合わせて一からつくります”といわれて一番困っているのはお客さん自身なのだ。