■ 言葉にならない
メールマガジンからいらした方、ここが「アタマに残る中小企業」で間違いないです。
大企業のCMを、皆さんどう見ているだろうか?
「やっぱ、芸能人使えるのは強いよなぁ」
「音楽も有名な人のだしなぁ」
「スタッフだって一流だろうし・・・」
「売れて当然だよな」
などと思いながら見ているのだとしたら、こんなに情けないことはない。イジケてるし、消極的だし、創造性がない。いまや、色っぽいモデルよりノバうさぎのご時世。別に無い物ねだりな惨めな見方をする必要は一切ない。
■ 宣伝には”傾向”がある
大企業の宣伝には、必ず傾向がある。もちろん裏で牛耳ってる広告代理店が独占・寡占の状態にあるも同然なんだから、似てきて当然。でも、似てくる理由はそれだけではない。
それが、”市場調査”の結果だ。大企業は安易に売れてる芸能人を使ったり、気分で宣伝企画を立てているわけではない(はず)。僕の周りにも「業界に入ったら好きな芸能人いっぱい使って知合いになるんだ」と言って最大手D社に入った知合いもいるが、そんな軽率な人ばかりではない。
■ 大企業CMからは、消費者の傾向を読む
例えば、最近の車の宣伝の傾向。小型車で、女性向きに開発されたCMが特に面白い。
パステル調で統一された車に調和する背景の青々とした街並み。20代前半の女性タレントが軽快に箱形軽自動車や乗用車に乗って走る。同じ系統のCMが2社から出されている。その中にあまり主張しないが、とても印象的で効果的な手法が使われているのに気付く。
運転している女性が、はっきりきこえないほどの小さな声で、
「ほほほっ♪」
「はははっ♪」
と笑い声ともつかない音をもらす。デザイン的に言えば、筆で書いたようなしっかりした印象のフォントではなく、手書きのヘタ字フォントで書きたくなるような”軽い音”。
■ この音の特徴
この声(音)を、「モデルが気ままに立てた音」と考えたり、気付かなかったりしているようでは、大企業の宣伝広告を自社広告に有効活用することは出来ない。
この音をわざわざ入れたのは企画段階から計画済みだったのか、現場で偶然「これだ!」と思ったのかは不明だが、明らかに製作者側の意図を感じる。
最近はお客さんに、
「女性に優しい○○デザイン」
「欲張り女性も満足の、カスタムメイド」
「とことんこだわる、とことん選べる」
とか言ってももう通用しない。ちょっと前ならこれで良かった、でも今はもう駄目。何しろみんながバカの一つ覚えで同じことやってんだから。当然この傾向を市場調査で掴んだ大企業は次なる方法の開発に取りかかる。
■ なぜ、”ほほほっ♪”なのか?
言葉に出来ない事を伝えるとき、人間は”感動詞(感嘆詞)”を使う。その方が簡単だし、なにより直感的だからだ。それは例えば、
「おお!」
「ああ!」
「へぇ〜!」
こんな感じ。でも、車に乗った時の軽快感や、快適性を「おお!」とか言っても伝わりにくい。そこで考え出されたのが、
「ほほほっ♪」
だと僕は推測する。この感嘆詞一つで、この車が思わず笑みがこぼれるほど軽快で操作しやすく、走る行為そのものが楽しいものであることが伝わってくる。特に運転が苦手と思っている人たちに、そのメッセージが伝わりやすい。多くの言葉を使うより、新開発の感嘆詞の方がより多くの情報を伝えることが出来る良い例だ。
■ その他
化粧品の宣伝で40代の女性が肌の手入れをしながら、さも楽しそうに
「フン、フン、フン ♪」
という”鼻歌”もこの感嘆詞に含んでもいいだろう。女性にとって1番肌の衰えを感じるのは肌の手入れの時らしい。歳をとるに従い、メイクの時間は楽しいものではなくなるようで、そのいわば苦痛の時間を”鼻歌”の時間に変えるこの化粧品。”鼻歌”象徴される魅力が見えてこないだろうか?
もう一つの例は、最近シリーズ化されているコミカルなガスの宣伝。
「すごい!」
の度合いを計器で計る。これ以上”今の傾向”の説明は要らないはず。
■ 是非、大企業並に市場調査をやってください
と言われて本格的な調査に金を使える企業があるはずない。だったら、大企業がやってる市場調査の一端をかいま見ることが出来るCMをもっと活用すべきだ。しかも、自分でやればタダ。
もちろん全てがCMに出てくるわけではないが、大勢は読み取れる。それらの独自研究データをアタマに貯めておくことで、アンテナの感度はドンドン良くなる、はず!