モデルハウスで「ご自由にご覧ください」と案内してはいけない理由と対案。

モデルハウスの入り口近くに、

「ご自由にご覧ください。御用の際はお声をおかけください。」

と書いた案内を置いていませんか?
「だけど、営業マンにいちいち近寄ってこられたらお客さん逃げちゃうでしょ?」という事情は重々承知ですが、工務店のモデルハウスの場合、これは絶対にやめてください。

モデルハウスを自由に見てもらうと、お客さまは“見たいところだけを見たいように”見て、御社が見てもらいたいところは見ません。最悪の場合、先入観を持ってモデルハウスに入場されて、「やっぱりそうだった」と確信してお帰りになることもあります。

例えば、天然素材の知識が少ない方がモデルハウスに来て、

「床が鳴る」
「木が割れてる」
「木が曲がってる(反ってる)」
「隙間が開いてる」

これら当然の自然現象を“欠陥・手抜き”と捉えてしまうことがあります。しかもやっかいなことに、こちら側から説明する機会をくださらないのです。

せっかくモデルハウスを建て、自社の実際の技術を見てもらう場所を作ったのにこれでは本末転倒です。

そもそも、モデルハウスとは何か?

工務店にとってのモデルハウスとはなんでしょうか。

工務店のモデルハウスとして多いのは、数年後に売ることを前提とした家。
住宅展示場への出展ではなく普通の土地にモデルハウスを建てます。後々販売することを考えると、展示場のような“夢すぎる家”ではなく、比較的現実的な仕様ながら自社の技術やデザイン、家づくりの姿勢を見せる場です。

つまり、工務店を知ってもらうための博物館のようなものです。
博物館に行くと必ずあるものは、

館内案内リーフレットと各展示物の解説プレート
そして『順路』標識です。

企画物の場合は音声案内まで有料で用意されています。
これらは全て、館内をより効率的に見てもらう配慮です。
博物館で、高級なブティックのように、物の横に名刺大の紙に商品名と価格だけ書いてあって「あとはあなたの感性に任せます」とやられたら面白くもなんともないですよね?

モデルハウスは、雰囲気を見てもらうことも大切ですが、やや難しい技術面も見てもらいたい。だから、

「ご自由にご覧ください」

と突っぱねてはもったいないのです。

なにを、どう見てほしいのかを『全て』指定する

モデルハウスの入り口では、御社が見て欲しいポイントを全て書いたパンフレットかリーフレットを置き、まずそれを手に取ってもらう。そして、御社スタッフが、直接お客さまにパンフレットの機能説明をして、ようやく、

「このパンフレットを見ながら、“ご自由に”ご覧ください」

と言えるのです。
パンフレットの機能説明とは、「パンフレットに従って歩いていただければ、見どころを漏らすことなく全て御覧いただける」という仕組みの説明です。

この機能説明は絶対に必要です。入り口でパンフレットをお渡しすれば見てもらえる、と思ったら大間違いです。普通、パンフレットは家に帰ってから見るものなので、入り口で渡されても「はいはい」と小脇に抱えて終わりです。そうならないための“機能説明”です。

更にご案内の場所ごとに、ピンポイントでポップを入れる。
モデルハウスに「順路」なんて矢印を書くのも野暮ったいので、順に見られるような番号なんかもあったほうが良いですね。

お客さまは、

「ここが見どころですよ」
「ここが他社と違うところですよ」
「ここ、是非見てくださいね。なぜなら~」

と指定しなければ見てくれないから、「ご自由にご覧ください」はご法度と考えてモデルハウスを演出してください。