女性客を重視するのは“偏重する”のではなく、女性の好みを実現しやすく助けること。

10年ほど前でしょうか(2005年頃)?
住宅業界にある波が押し寄せました。

「女性を重視しなければならない」

当時、女性をターゲットにしたマーケティング手法を旗印とした女性起業家がメディアでもてはやされ、

「男性用のパンツを買うのも女性が決める。だから、企業は女性を掴まなければ!」

という論調が世間を埋め尽くしました。女性だけの商品モニター・派遣会社、イベントやプレゼントなどなど、男性側からすると、異常に加熱した女性“偏重”マーケティングに見えたことを覚えています。

完全に女性しか念頭にない家のデザインや仕様、ホームページも可愛く甘い感じで作るようになったのもちょうどこの頃です。

女性が魅力を感じるだけでは最後に女性だけが損をする

先ほどのパンツ話の続きでもうしわけないですが、夫・息子が妻・母の買ってきてくれたパンツを無条件にはくことはありません。往々にしてあるのは、女性が女性の感覚で購入して家に持って帰ると、

「え~、これ?こういうタイプより、これこれな方がいいんだけど」
「こんなのはいてるヤツ、だれもいないよ!」

と、折角買ってきたものを批判された上に、そのパンツをはかないなんて失礼なことは、かなりあります。女性にしたら、

「じゃ、自分で買ってこいよ!ヽ(`Д´)ノ」

というのが大正解でしょう。しかし、現実問題としてこういう役回りになってしまっている女性は多い。こんな失礼な事態にならないようにするためには、店頭で女性に選ばれやすいようにパッケージを作るのではなく、

「このメーカーのコレコレを買ってきて」

と当の男性がカンタンに銘柄指定できるようにアピールすべきなのです。多くの男性はパンツなんか柄ではなく“仕様優先”で選びますから。柄は後です。パンツの仕様は女性には理解しがたい部分ですから、イヤな思いをしないためにも銘柄指定してもらった方が良いわけです。これが、女性にアピールするだけだと女性だけが最後に損をする例。家づくりでも似たようなことが起きています。

家づくりの過程で女性をサポートする方法を考える

男性は、「なんでもいいよ」「好きにしたら良いじゃん」と言うことが多いです。でも、女性側もちゃんと知っているはずです。

「なんでも良いと言いながら、『まさかこれを選ぶなんて』って文句も言うのが男」

最初から、女性!女性!と女性が気に入る内容の家で推しすぎると最終段階で、男性が

「もうちょっとこんな感じにしたら?オレの○○はどうなるの?」

と横やりを入れて来るパターンがあります。その横やりが、奥さまが一番求めていたことを決定的に否定してしまうという例も多々見てきました。結果、奥さまが何となく不機嫌になる。ご主人も不機嫌。家のデザインもなんとなく中途半端。

家づくりで女性が一人でホームページを見てオープンハウスに来場して、最終決定を下すなんてことはありませんが、女性がホームページから最初の問い合わせをくださるケースは非常に多いです。その流れをざっと予想すると、

女性がホームページやチラシで好みの家を見つけ、多数の会社から数社を選びます。
そのリストをご主人に「こんな感じが良さそうなんだけど、どう?」と聞く。
このあたりで「好きにしたら良いんじゃない?」とご主人はいい感じのことを言う。

この段階で、ご主人が飛びつきそうな要素を用意しておくと、奥さまがご主人を説得しやすくなります。

どんなことに飛びつきそうか、それこそが頭をつかう場面です。
よく出てくるキーワードがあるじゃないですか!

書斎
趣味室
ガレージ
ホームシアター
屋上
のぼり棒
滑り台
秘密基地
ロフト

こんなキーワードを含めておくと、それらが実現するかどうかは別として、

女性が憧れて住んでみたいデザインで
男性がワクワクする仕様

が揃います。
すると、デザイン的に女性が主導しても、同時に男性側の好む仕様も満たされます。私たち男性は意外に単純です。

先ほども申し上げた通り、女性客が最初の問い合わせをくださるケースがとても多い。
だからといって、女性の好みだけをバリバリ推しても幸せになれません。
女性だけがお客さまではないからです。
最初にお問い合わせくださる女性を重視するということは、

女性の好み実現のために男性を誘導しやすくする要素をちゃんと用意しておき、女性を男性の横槍から守ること。

これに尽きます。