家のスタイル名やブランド、ラインナップの序列は分かりにくくないですか?

一つの工務店が和洋どちらも手がける場合、少しでも分かりやすくするためにスタイルごとにブランドを作ることが多くなってきました。

ラインナップを分ける場合、分類の基準となる要素がいくつもあります。その要素やコンセプトの整理ができないまま、思いつきで無計画にラインナップを増やしたり減らしたりすると、肝心のお客さまにとって非常に分かりにくくなり本末転倒です。

極端な例え話で説明します。(実話に基づく?フィクションです)

ある工務店では、「ヨーロッパ」「和風」「モダン」というブランドで展開していました。
3つともスタイル分類です。

そのうちの「ヨーロッパ」が人気になってきました。「ヨーロッパ」は重厚な雰囲気の家です。ところが、お客さまの中には「明るい感じ」が好きな方がいたため、それに対応するために『ヨーロッパ・ミストラル』という明るい感じのタイプを増やしました。

「ヨーロッパ」「ヨーロッパ・ミストラル」のスタイル分類です。
ブランドの総称と小ブランド名で「ヨーロッパ」がダブっているので、既に分かりにくい感じ・・・。

すると、今度はなぜか「ヨーロッパ・ブライト」というスタイルも作ることにしました。これはその名の通り明るい感じの家です。

ここでラインナップは、
「ヨーロッパ」「ヨーロッパ・ミストラル」「ヨーロッパ・ブライト」
の3つに。一応スタイル分類。

ただ、明るいイメージといえば、既にある「ヨーロッパ・ミストラル」とダブります。ブランドを分けるなら、初めて見た人でも「なるほど、そういうことね」とわかるほど明確にすべきです。でも開発者自身が違いが説明できないので当然のことながら、それを売るスタッフも違いが判然としない状態が続きます。そもそも、コンセプトも何もない状態でなぜこの子ブランドを発表してしまったのか?

すると、3つのイメージを見比べたお客さまが、「ブライト=廉価版」と勘違いしはじめました。そう思って話をすると、

「価格分類ではない」

と言うので、

「それなら・・・『ヨーロッパ・ミストラル』『ヨーロッパ・ブライト』の違いは?」

と聞いても、スタッフもよく分かっていない。
もはや、何がなんだか分からない状態。
お客さまは不信感を持ちます。
その後、「ヨーロッパ・ブライト」は廉価版になったり、別の工法を使った家になったりと迷走を続けていくのですが、それに加えて、なんとなくこの頃アメリカが流行ってきたので、「ヨーロッパ」ブランドの中にもう一つニューモデル、

「ヨーロッパ・サンフランシスコ」

を作るような気配に・・・。

これは、スタイル分類と地域分類がごちゃまぜ。

もはや、思いついたものは全部作ってしまえという勢いで、分類のことなど意識にありません。最初に「ヨーロッパ」を総称とした時点で「サンフランシスコ」はありえません。「アメリカン」もダメです。

この例はあり得ないほど極端ですが、実際にこれに近いことが世の中では起きています。なぜこんなことになってしまうのでしょうか?

ブランドを分ける時は、無計画に思いつきで種類を増やさない

ブランド分けの目的は一つ。

お客さまが商品を選びやすくすること。

そのためには、まず最初に分類の基準をしっかりと整備する必要があります。一貫した分類基準にそって分かれていればどれだけ増やしても問題ありません。ただ、多すぎると選びにくくなるし、印象も悪くなります。

分類の基準となりえる要素は、例えば、

  • 価格
  • スタイル
  • 和洋
  • 男性的・女性的
  • 工法
  • 地域(アメリカ・ヨーロッパなど)
  • デザイナー別


など。可能な限り基準を一つにしてください。
個別対応可能であっても、それを別ブランドにするのはやめましょう。例えば、

「明るいものと暗いものを混ぜたい」
「1階は高級ブランドがいいけど、2階は廉価モデルがいい」

というお客さまがいても、殆どの会社は対応できるはずです。
ホームページのどこかか、実際にお話しする機会のあるお客さまには説明すべきですが、「わかりやすくしよう!」と

ミックスソフトクリーム
ミックスソフトクリーム+トッピング

みたいな品を増やすのは得策ではありません。逆に分かりにくくなってしまうだけです。

時代に合わなくなったブランドは潔く廃止する

それから、時代に合わなくなったブランドは廃止してしまう方が良いです。以前、

「そのモデルで建ててくれたお客さまに悪い」

という理由で、受注がほとんどない時代遅れになってしまったモデルをいつまでも残していた工務店がありました。商品が入れ替わっていくことは誰でも知っています。それが高額な家だったとしても当然です。

「オレが買ったモデルが消えてる!オレの買った家はダメ商品だったのか???」

なんて言う人は稀でしょう。
新しいお客さまにとって分かりやすい構成を心がけてください。