皆が同じことをいい出したら、比較できるのは価格だけになってしまいます。

少し前までは「F★★★★」を誇っていた住宅業界も、今ではフォースターに触れることもなくなってきました。「F★★★★」ではあまりにも当然すぎていますから。

今では素材の安全性の表現は、

天然素材
自然素材
無垢
無添加

などにシフトしています。
大手メーカーとは異なり、どこの工務店でも表現方法は違えど素材の安全性に関しての認識は非常に高いです。

ところが困ったことにこの安全性のお話、住宅業界ではおなじみのあることとダブります。あの悪名高い、

坪単価

です。安全性の高さを謳っている工務店の近隣エリアの同業者で口の悪い社長にかかると、

「あんた、知ってる?あそこの言ってる自然素材なんてデタラメもいいとこだよ」
「あそこの漆喰、総天然とか言ってるくせに、ホントは樹脂ばっかりだよ」

基準がないのです。
坪単価と同じで基準がまちまちなので、良いものでも少し視点がずれるとこき下ろしの対象になってしまいます。

かといって、アメリカの広告のように他社を名指しで「インチキ」というわけにもいきませんから、ジリジリとしてしまう。

そんな中で、自然素材が強みだと強調していくのであれば、多くのお客さまは、

「自然より自然ってことはありえない。自然だと言うなら、値段が安くても安全なんじゃないの?」

と値段比較になってしまうことは避けられません。

こんな時、どうしたら良いでしょうか?

ここでどれだけ説明に時間を使っても、坪単価と同じ道をたどるような気がします。

一番になろう!と比較基準のない世界の泥仕合に飛び込むより、次に出来ることは、

安全性陳腐化作戦

かもしれません。
素材の安全を陳腐化する、というのは極端な話、

「まだ素材の安全なんて言ってるんですか?安全なんて当たり前じゃないですか!」

と、安全競争そのものがもはや存在しないかのような話にしてしまう。
もちろん、自社の素材が安全ということはきちんと表示しますし、他社より説明も詳しくする必要があります。その上でもっと重要なこととして、安全以外の自社の強みを強調していく。

自社の強みを強調する方法として有効なのは、お客さまに

良否判断の基準をできるだけ早く与えてしまうこと

です。例えば、同じ樹種の材木でも、採れた地域や部位によって品質が異なり、プロならその材木が良質なものか劣ったものなのかわかります。牛肉だって、一括りに言ってしまえば全て「牛肉」ですが、その中にも優劣があるのと同じこと。ただし牛肉にはブランドがあり、その認知度が高いので材木ほど分かりにくくはないですが。(ちなみに認知度が高い=騙されない、ではありません)

お客さまは『これはヒノキです』と言われたら、それはヒノキでしかない。

見た目立派だし、強そうだし、太いし、匂いも木の匂いだし。
紛れもないヒノキなんです。

もし御社に仕入れ規定があり、その規定に満たないものは使わない、という方針があれば

木の良し悪しを見分ける目利きになる認定講座

を開いてでも、お客さまに木の良し悪しを教えてあげて欲しいのです。
そうすれば、別の会社へ行っても御社の教えた基準を元に優劣を判断してくれます。

その結果、「あの会社のヒノキの方が長持ちする品質のヒノキだったね」と考えてくれるようになります。

素材の安全性で戦うのは、もはや危険です。
安全性以上の自社の魅力を見つけ出してください。
そしてお客さまに、御社と他社と比較するための基準を教え込んでしまいましょう。