ある工務店では年に一度、初夏にビッグイベントを開催していました。
(今は“休止”といいますか、ここ6年ほどは開催されていません。今回はこの“休止”に至るお話です。)
公共の大きなレセプションルームを借りて、自社アピールの展示のみならず、
- お好み焼き
- たこ焼き
- 夜店のようなゲームコーナー
- リフォームメニューオークション
- 建材オークション
- 協力業者さんの展示
など、盛りだくさんの二日間。
来場者は住所氏名電話番号を記入すれば、全て無料!
単独工務店としては、かなりの規模です。
昭和の終わりから行っていたそうで、地元密着の工務店らしく
スタッフの皆さんも無類の祭り好き!
ということで、盛り上げ方が上手い。
文字通り、鐘や太鼓でやんややんやと賑やかです。
近所の方々も毎年楽しみにしています。
さらに社長もお祭り好きなので、機材もレンタルばかりではありません。
- 調理器具
- テント
- テーブル
- バルーンハウス(人が入れるもの)
- そして、なんと!ミニチュア蒸気機関車まで!
(バブルの時代に購入されたそうです)
二日目の夕方になると会場が本社に移動し、地元の方々が集まってきてアルコールが入ってくるのも、平成初頭からの習わしなのだそうです。
私も一度「息子さん、連れてこい!」と呼んでいただき見学に伺いました。そこでこのイベントについてお話した時、社長曰く、
「この集客で半年分だわ」
ということでした。
ただ、お祭り集客自体が時代に合わなくなってきたことにも触れていらっしゃいました。以前は、
「こんだけ楽しませてもらっとるで、家建てる時はあっこに頼まなやらしい(気が引ける、というような意味)やん」
と、義理堅い土地柄だったそうです。だから、この地域で別の工務店や住宅メーカーで家を建ててたり、リフォームしたりする人はほとんどいなかったそうです。
「●●さんの息子が結婚するで、家、面倒見たってよ」
と値段なんて関係なく、“付き合い”で家が建っていました。
これは人のつながりが強かった地方の小さな都市ではかなり共通したものです。
日本人らしい!
そんな感じがします。
インターネットが変えたイベントのあり方
ですが、インターネットが出現してこの状況が変わりました。
お客様の知識が増しました。
価格が比較できる。
家づくりの選択肢が広がる。
知らなかった会社の中にも良い会社がある
特に若い世代は、この工務店のイベントには小さな頃に行ったが、だからといって家は自分の好きな家を好きな会社で建てたい。
親の世代の付き合いであって、自分は関係ない。
と考えるようになりました。
“やらしいで”という感覚は若い世代にはありません。
イベントに参加して楽しんでも、そこに義理を感じる義務があるわけではないので、そのあたりの切り分けもドライです。
この世の中の変化を見て、社長はイベントの存続に疑問を感じていたそうです。
そこへ、
東日本大震災
が発生します。
世間が自粛ムードになりました。
「そんなことやってる場合じゃない」
「被災地に失礼だ!」
という論調と同時に、
「地震があったからって、他の土地が自粛して世間を暗くする必要はない」
という声もありました。
ですが、あれだけの大きな地震です。
離れているとはいえ、全く影響がないわけではない。
初夏のイベントを大々的に行って、いつものように楽しめるのか?
お客様は来てくださるのか?
そんな浮ついたことをしていて、会社の評判は落ちないか?
と悩み、社内で会議を行い、
その年のイベント休止、を決定しました。
休止はその年だけではなく、以来今日まで開催されていないので、事実上の終了ということだと思います。
地方都市と言えども地域のつながり方が大きく変化しています。
ネットで簡単に価格比較が出来るようになったことから、普段の生活と商業をドライに区切る感覚も定着してきました。
集客のためといって、
家づくりしたい方限定!
としてしまうと、ガードが上がって来ていただけない。
だからといって、家づくりと関係ない、コーヒー・紅茶講座やアクセサリー作り、クラフト教室を定期的に開いても、
習い事感覚
で参加だけされる方も少なくありません。
しかも、その工務店の対応エリア外から申し込みがあることもあります。
そのイベント、習慣化しているだけだと感じたら、終了させる時なのかもしれません。